周辺の生物に濃縮しない

 

 廃炉作業が進められている原発周囲に保管されているトリチウムを含む「処理水」について、国際原子力機関(IAEA)からの報告書を参照し、これまで説明をしてきました。

 放出された処理水にはトリチウムが含まれるわけですから、海水で薄まるとはいえ、そこで生息する魚などにトリチウムが濃縮してたまるのではないかと心配される方もおられると思います。

 結論としては、魚などへのトリチウムの濃縮を危惧する必要はありません。

 一つの実験として、トリチウムがそれなりに含まれている海水の中で、ヒラメを飼う実験が行われました。そのヒラメは、トリチウムが含まれる海水の中で生活するわけですから、ヒラメの体内のトリチウム濃度は上昇します。しかし、ヒラメの体内のトリチウム濃度は、実験で使われている(ヒラメが飼われている)海水のトリチウム濃度より高くなることはありませんでした。

 また、ヒラメの体内のトリチウム濃度は、時間がたつと一定となり、どんどんと濃度が高くなることはありませんでした。加えて、そのヒラメを通常の海水に戻して飼育を続けると、ヒラメの体内のトリチウム濃度は速やかに下がることが確認されました。

 トリチウムは基本的には水の形で存在しています。処理水として放出されたトリチウムは、海水で薄まり、それが周辺の生物に濃縮していくという状況ではありません。