10年間被ばく量、検査研究

 

 前回は、検査の意味についておさらいしました。

 放射線に関するさまざまな検査は、私たちが「初めて」被ばくしたかどうかを調べる検査ではありません。元々、私たちは自然に存在する放射線に囲まれて生活し、外部被ばくや内部被ばくを受けています。さまざまな検査は、その日常生活で受けていた被ばく分に加えて、原発事故でばらまかれてしまった放射性物質によって、どの程度被ばくが増えてしまっているかを調べているのでした。

 加えて、このような検査は、今まで被ばくした量全てを計測できるものではありません。「今どうなのか」を知るための検査になります。空間の放射線量は今の、その場所の放射線の量を見ていますし、ホールボディーカウンターであれば、その検査した当日に体内に含まれる放射性物質がどの程度かを見ています。

 そのため、例えばこの10年間で受けた放射線の量の合計はどうだったのかを、一つの検査で調べる方法はありません。歯のエナメル質や白血球の染色体を見ることで、これまで受けた放射線量の合計を調べる方法も研究されてはいますが、今回の原発事故に伴う放射線の量と比べて数千倍など桁違いに多い放射線量の時でないと結果を得ることは厳しそうです。

 事故直後の被ばくはどうだったのかを知る方法は二つです。できるだけ早期に行われた検査を参照するか、環境中に計測された空間線量や放射性物質の量を用い、その当時のシミュレーションを行うかになります。