放射性物質、薬でブロック

 

 放射性物質は、放射線を外に出しながら、徐々に安定な物質へと変わっていきます。放射性物質から放射線を出す能力が半分になるまでの時間は、セシウム134では約2年、セシウム137では約30年です。これを「物理学的」半減期と呼ぶのでした。

 その一方、身体の中に放射性物質が入ってきた場合、それらの放射性物質は、尿や便などから徐々に排出されていきます。この排出されていく速さのことを「生物学的」半減期と呼び、セシウムであれば、成人では約100日、子どもでは約1カ月で半分になります。これは身体と放射性物質の関係の話でした。

 このように、放射性物質は徐々には減っていくものの、放射性物質と何かを混ぜたら、放射線が出なくなるとか、放射性物質自体が消えてしまう、といったような反応を起こすことはできません。そのようなことを言っているものがあれば、それらは全てうそです。

 その一方で、放射性物質が身体の中に入らないようにブロックする薬は存在します。一つの例は「安定ヨウ素剤」といわれるものです。放射性ヨウ素が甲状腺に入ってしまう前に、甲状腺を通常のヨウ素でいっぱいにしてしまい、放射性ヨウ素が入ることをブロックするものです。

 国内では原発の再稼働が始まっていますが、例えば福井県では、有事に備えて原発の周辺数十キロの範囲に住んでいる方の中で希望者には、この安定ヨウ素剤が配布されています。