昆布でヨウ素が摂取可能

 

 放射性物質は、放射線を外に出しながら、徐々に安定な物質へと変わっていきます。しかし、放射性物質と何かを混ぜたら、放射線が出なくなるとか、放射性物質自体が消えてしまう。といったような反応を起こすことはできません。

 その一方で、放射性物質が身体の中に入らないようにブロックする薬は存在します。一つの例は「安定ヨウ素剤」です。放射性ヨウ素が甲状腺に入ってしまう前に、甲状腺を通常のヨウ素でいっぱいにしてしまい、放射性ヨウ素が入ることをブロックするものでした。

 ただ、この薬を飲まなければ、放射性ヨウ素が甲状腺に入るのを全くブロックできないというわけではありません。日本人は海産物を多く食べるため、世界的に見ても多量に「ヨウ素」を摂取しています。

 中でも昆布は群を抜いて「ヨウ素」を多く含む食材です。昆布のつくだ煮を大さじ1杯食べれば、成人の1日に必要な量の10倍以上の「ヨウ素」が含まれます。また500ミリリットルのスポーツドリンクやインスタントうどんには、1日に必要な量の半分、十六茶にはスポーツドリンク以上の「ヨウ素」が含まれます。それぞれの材料に昆布が使われるためです。

 これらのことは、震災当時から甲状腺内には常に(通常の)「ヨウ素」が十分にあったこと。そして、原発事故直後に放出された「放射性ヨウ素」が甲状腺に入り込む隙を奪い、「放射性ヨウ素」による甲状腺の被ばくに対して防御的であったということを意味しています。