放射性ヨウ素、医療使用も

 

 日本人は海産物を多く食べるため、世界的に見ても多量に「ヨウ素」を摂取しています。私たちが日常的に「ヨウ素」を摂取していることは、震災当時から甲状腺内には常に(通常の)「ヨウ素」が十分にあったこと。そして、原発事故直後に放出された「放射性ヨウ素」が甲状腺に入り込む隙を奪い、「放射性ヨウ素」による甲状腺の被ばくに対して防御的であったということを意味しているのでした。

 ここで出てくる「放射性ヨウ素」ですが、原発事故の際だけに登場する物質ではありません。実は甲状腺がんの治療の一つとして使われることがあります。治療のために体内に「放射性ヨウ素」が投与されると、身体の中の甲状腺がんがある場所に集まります。そこで放射線を出して、がん細胞を治療してくれるのです。

 病院で「放射性ヨウ素」が治療に用いられる際には、体内に投与された後、身体の外に放射性ヨウ素が十分排出されて、問題のない状態になってから、退院となります。

 ただ、言い方を変えれば、体内の放射性ヨウ素が完全にゼロになるまで待ってから退院というわけではありません。原発事故から数年たった後、内部被ばく検査で微量の放射性ヨウ素が検出されたことがありました。もちろん、半減期としても原発事故の影響ではありません。放射性ヨウ素を用いた甲状腺がんの治療をされて、退院した直後に内部被ばく検査を受けたからだったということがありました。