放射線教育、工夫が必要

 

 能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福を謹んでお祈りするとともに、被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 さて、県内のさまざまな学校で放射線や原発事故に関する講義をするようになって12年以上になります。ほとんどの小学生が東日本大震災後生まれとなり、授業をする側により工夫が求められるようになりました。

 震災数年後の頃は学生も真剣で「本当にそうなのか」といった質問が飛び交いました。「僕は身体が弱い。本当に大丈夫なのか」と泣いて質問してくる学生もいました。数年たつと、徐々に「慣れた」とか「飽きた」といった雰囲気が多くなったように思います。ただ、授業の中で原発事故や放射能汚染があったこと自体を説明する必要はありませんでした。内容についても、事故はあったけれども、放射線被ばくによる健康影響や遺伝影響などを懸念する必要はないということを丁寧に伝えることが中心でした。

 そこからさらに数年がたち、新型コロナウイルス禍も経験し、より昔となった原発事故と放射線に関する講義は、学生たちのほぼまっさらな目にさらされるようになりました。原発事故と聞いても、教科書や家族から聞いたことのある昔のことという印象です。

 それ自体が悪いことだとは決して思っていません。しかし、まだまだ誤解や偏見があったり、考えるべきことがあったり、私たちが知っておくべき基本的なことは多くあります。この連載も10年目になりました。皆さまのおかげで何とか続けられております。感謝申し上げます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。