水素の地産地消、デンソー確立へ 福島工場で生産工程燃料に活用

 
実証のイメージ図

 温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現を目指す自動車部品製造大手のデンソー(愛知県)は、福島県田村市のデンソー福島で製造した水素を生産工程の燃料として活用する取り組みを開始した。月6万台製造する車のラジエーターの生産に利用しており、デンソーによると、この規模での水素の活用は世界的にみても極めて珍しいという。同社は水素の地産地消を確立し、利活用を推進したい考えだ。

 デンソーは17日、デンソー福島で実証を公開した。ラジエーターの生産工程で排出されるガスを燃焼させて無害化する「アフターバーナー炉」の燃料をLPガスから水素に置き換え、二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指す。アフターバーナー炉は高さ2メートル弱、長さ約4メートルで、1時間当たり約5キロの水素を使用する。

 水素は工場敷地内の太陽光パネルで発電した電力を使い、トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」に搭載されている燃料電池の部品を流用した水電解装置で製造する。LPガスを燃料にしている他の工程でも、燃料を電気に転換するなどしてCO2排出量を削減する。

 実証は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を得て実施しており、3月29日からこの実証で製造したラジエーターを納品している。デンソーの山崎康彦副社長は「ものづくりをする多くの業種がカーボンニュートラルをどう構築するか、頭を悩ませているはず。福島工場を水素実装のショーケースとして各業者へ情報提供していくことが大事」と述べた上で「水素利活用を推進する仲間の輪を広げ、福島から全国へ水素地産地消モデルの展開を目指したい」と語った。

 実証の公開に伴う式典には、山崎副社長のほか、川島俊哉デンソー福島社長、内堀雅雄知事らが出席した。内堀知事は「福島発の水素技術を活用した取り組みは素晴らしいもの。県を再生可能エネルギー先駆けの地とすることの実現に向けた力強い後押しになる」と述べ、県が目指す2050年までのカーボンニュートラル実現への一助として期待を寄せた。