現職・伊沢氏が無投票で再選 双葉町長選、復興を具体化へ

 
万歳三唱で再選を喜ぶ伊沢氏(左)。右は妻節子さん

 任期満了に伴う双葉町長選は19日告示され、現職で無所属の伊沢史朗氏(58)=1期=のほかに立候補の届け出はなく、伊沢氏が無投票で再選を果たした。同町長選が無投票になるのは1983(昭和58)年以来34年ぶり。

 伊沢氏は1期目で役場機能のいわき市への移転や町立学校の再開などに尽力した。2期目は帰還困難区域内での除染や住宅整備など、復興をより具体化させる施策に取り組む。

 当選証書付与式は30日午前11時から、いわき市の町いわき事務所で行われる。任期は3月10日から4年。

 町政の難しさ反映 帰還へ国との調整途上

 19日に告示された双葉町長選が無投票となり、先行きを見通しにくい町の復興のかじ取り役は伊沢史朗氏(58)=1期=に託された。無投票となった背景には、町の面積の96%が帰還困難区域という環境の中、復興を形にするには2期は必要と伊沢町政の継続に期待する見方があるほか、同じく無投票となった町議選も含め、避難自治体ならではの選挙戦の難しさがある。

 町民は全国38都道府県に分散。半数以上の約4100人は県内で暮らし、県外に約2800人がいる。4年前とは変わり、避難先で自宅を構えるなど新しい生活を踏み出した人も増え、仮設住宅の入居者は激減、一時役場機能があった埼玉県加須市の避難所が閉鎖されるなど、町長選が選挙戦となった場合、前回以上に政策を伝える場を探すのが難しくなっている。4人が立候補した前回の町長選から一転し、今回は伊沢氏のみが告示約1カ月前の昨年12月中旬にようやく立候補を表明。住民が分散し、平時の選挙の「地盤票」が期待しにくい中、選挙戦になったとしても「現職の知名度を上回れない」との見方から、最後まで目立った対抗馬擁立の動きはなかった。

 町議選も選挙の難しさは一緒で、選挙運動は一部に絞る候補者も多く、町選管によると選挙カーの使用申請をした人はいなかった。

 町のほとんどが帰還困難区域に指定され、いまだ具体的な帰還時期は見通せない。他の避難自治体で解除への準備が進む避難指示解除準備区域も、双葉町ではインフラなどの環境整備や国との調整がこれからで、解除時期は示せていない。その状況で、現町政とは違う新たなまちづくりのビジョンを描き、新たに町のかじ取り役を担おうとするのは簡単ではない。

 伊沢氏の1期目では、復興インターチェンジやアーカイブ拠点施設の設置が決まり、働く拠点「復興産業拠点」の整備にも着手したが、町民からは「復興が目に見えない。希望になるようなシンボルがほしい」との声も上がる。震災から時間が経過し、町民の帰還意識が薄れていく中、どのように双葉町の再生を図るのか、伊沢氏の手腕が注目される。