"新天地と共に" 岡田会長「従業員は宝」、地元近くで再開

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震災当時の工場の写真を前にする岡田会長。「従業員は宝。雇用を最優先した」と相馬市での再開理由を話す

 デジタルカメラの部品などを手掛ける富岡町の精密プラスチック製造フジモールド工業は、東京電力福島第1原発事故に伴い新天地での再開を決め、本社・工場を移した相馬市で2012(平成24)年4月に事業を再開した。

 同社は海外にも工場を持つ。海外に生産機能を移すとの選択肢もあったが、県内を選んだ。当時社長だった岡田利一会長(64)は「従業員は宝。雇用を最優先するためには地元を離れるわけにいかなかった」と理由を明かす。相馬市と基本協定を結び、早期の事業再開にこぎ着けた。雇用を守り、早期に再開したことで「技術力を守り、顧客の不安も解消できた」と振り返る。

 再開に先立ち従業員は約7カ月かけて富岡町から金型など約千個を運んだという。電気が不通な上、放射線量を気にしながらの作業となったが、金型は「会社の命」だった。

 同社が力を入れるのは若手技術者の育成。金型技術を伝承するため、再開後も積極的に新卒者を採用しており、ベテランと若手が技術を高め合っている。岡田英征社長(36)は「これからも人材育成と雇用創出、技術開発、新規事業展開に重点を置き、福島に必要とされる企業を目指したい。福島復興の一助になれば」と決意をみなぎらせた。

 最先端技術の育苗工場進出 

 県産農産物が東京電力福島第1原発事故の風評被害を受ける中、最先端の技術を駆使し、屋内で農産物を栽培する植物工場の稼働が県内で相次いでいる。

 育苗大手のベルグアース(愛媛県宇和島市)が「東日本の拠点」として川俣町で稼働を目指す、人工光による苗生産施設などを備えた育苗工場もその一つだ。町によると、春ごろの操業を目指していたが、造成工事が遅れ、秋ごろにずれ込むという。町にとっては40年ぶりとなる上場企業の進出。「復興の起爆剤」としての期待は大きい。

 敷地には苗生産施設をはじめ太陽光を利用した育苗ハウスなどが並び、キュウリやトマト、ナス、スイカ、メロンなどの苗を生産する。施設の面積は約0.5ヘクタール。本社に次ぐ規模となる見通しで、約2.7ヘクタールの農場を併せ持つ。稼働すれば本県産の苗が県外に流通されることになる。

 「工場立地」震災前水準を維持 

 県が復興の核として掲げる産業集積。昨年の県内の工場立地件数は新設、増設いずれも35件の計70件で、2010(平成22)年からの増加傾向がストップしたものの、震災前の水準を維持する。政府は、東京電力福島第1原発の周辺地域を廃炉や災害対応ロボットの研究開発拠点などとする福島・国際研究産業都市構想に合わせて浜通りへの工場誘致などを進める方針で、工場立地が今後も進むと見込まれる。

 工場立地が震災、原発事故前に比べて増えているのは、県内工場の新増設を支援することで、地域経済の活性化や雇用創出につなげる「ふくしま産業復興企業立地補助金」があるからだ。12、13年は同補助金の活用が進み、工場立地がいずれも100件を超えた。14年の工場立地数の減少について、県は「補助金活用のピークが過ぎた」ことが大きな要因とみている。14年の工場立地を地区別でみると、立地件数が増加したのは震災、原発事故の影響が色濃く残る相双地方で前年の12件から2件増の14件となり、被災地に産業が進出していることが見て取れる。業種別では化学工業が10件と最多。金属製品製造業が9件、生産用機械製造業が8件と続き、加工組み立て型の工場進出も目立つ。

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