本格操業へ歩み着実 「試験操業」開始4年2カ月、対象魚種拡大

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故以降、本県沖で行われている試験操業は、8月で開始から約4年2カ月が経過する。対象魚種は開始当初の3種から、73種(4月現在)に増加、着実に本格操業への歩みを進めている。

 試験操業は、国の出荷停止指示が出されている魚種を除く、本県沖の魚を対象に実施されている。魚種を限定し、小規模な操業と販売を試験的に実施し、出荷先での評価を調査しているほか、流通させることで、本県の魚の安全性をアピールすることが狙い。

 対象魚種の拡大が進んでいるものの、試験操業での漁獲量は震災前の約6%。2010(平成22)年の年間漁獲量が約2万5000トンだったのに対し、15年は1500トンしかない。参加している漁業者には魚の売上金が振り込まれるものの、いわき市漁協によると、「利益を上げることはほぼ不可能」といい、厳しい現状がうかがえる。漁業者の中には、賠償金と試験操業での売り上げでの生活や、ほかの仕事をして家計をやりくりしている漁業者もいる。

 6月に出荷停止指示が解除された県産魚介類の代表格ヒラメについて、漁業者たちが、試験操業の対象魚種追加への議論を重ねている。
 「常磐もの」と呼ばれる本県沖の魚を代表する魚種なだけに、放射性物質の基準値超などがあってはイメージダウンにつながってしまう。それだけに議論は慎重に進められている。

 また、品質では他県産のヒラメに引けを取らないことから、試験操業で取るヒラメのサイズについて、市場で評価を受ける大きさを選ぶことを検討している。常磐ものブランドの復活を念頭に、漁業者の試行錯誤が続いている。

 一方、漁業者の意欲を維持するための取り組みについても検討が進む。震災前の漁では、それぞれの漁業者が取った魚に、仲買人が競りや入札で値段を付け、漁業者の売り上げとなっていたが、試験操業では、価格は一律となっており、漁業者の間では、試験操業での競りや入札の復活を要請する声も上がっている。

 試験操業は、操業海域やシステムなど多岐にわたり震災前と異なる点がある。漁業者たちは、早く震災前のように本格的な漁業ができるよう奮闘を続けている。

 検査クリアで市場流通

 本県沖で実施されている試験操業は、放射性物質検査など、通常の漁とは異なる過程を踏む。

 試験操業では、漁業者たちが一斉に水揚げし、仲買業者の組合が選別作業などを行う。その後、検体を選び、いわき市、相馬双葉の各漁協の所定の場所で放射性物質検査を実施する。県漁連が独自に定めている、1キロ当たり50ベクレルの数値を下回れば、日本各地の市場に出荷される。価格は出荷先の市場での競りで付けられた値の平均値で取引される。平均値から、仲買業者の諸経費などを引いた価格が魚の単価となり、漁獲量に応じた売上金が、漁業者に支払われる。