「町外出身」職員の力!復興へ熱意の志願 原発事故の避難自治体

 

 東京電力福島第1原発事故に伴い避難した町村で、地元以外の出身の職員の割合が増えている。復興に携わりたいと熱意ある人が志願したことなどがその理由だが、東日本大震災前の町の姿を知らず、町や住民とのつながりをどのように築いていくかが課題となっている。

 研修資料に並ぶ方言

 【双葉町】「もごい(かわいい)」「んだ(そうです)」「はかんぐ(仕事が進む)」―。双葉町の新採用職員を対象にした研修の資料に、町の方言が並ぶ。町を知り、町民とのコミュニケーションを円滑にしていくために「堅いことばかりやっていても仕方がない」と舶来丈夫総務課長は話す。
 原発事故で全町避難が続く双葉町では、正職員94人(4月1日現在)のうち、町外出身者は40人で全体の42.5%に上る。長期避難で古里を離れて育った若者の双葉町に対する関心が薄れているのか、本年度の新採用職員5人は全て町外出身者だった。
 全国の自治体や県からの派遣職員を含め、町を知らない職員が増える中、町は毎年1回、町を学ぶきっかけをつくり、業務や復興に生かしてもらおうと新採用職員らを対象にした研修を行っている。
 5月15日の研修で新採用職員は座学で町の気候風土や文化などを学んだ後、町内に移動。津波で被災したマリーンハウスふたばや復興産業拠点などが整備される避難指示解除準備区域の中野地区、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の整備が進められるJR双葉駅周辺などを視察した。
 舶来課長は「町外出身だからできない仕事はない」と強調した上で「ただ昔から知る職員と話したいという町民もいる。そこは積極的に話し掛け、顔なじみになるしかない」と語った。

 正職員の3割占める

 【大熊町】大熊町は2016(平成28)年度から、新採用の職員や全国の自治体から派遣された職員を対象に、町の様子などを知らせる研修を行っている。
 本年度は5月31日と6月1日の2日間の日程で、新採用6人と県などから派遣された7人が参加した。初日は福島第1原発構内を視察。最終日はバスで帰還困難区域を巡り、津波被害の傷痕が残る海岸部や特定復興再生拠点区域(復興拠点)として整備されるJR常磐線の大野駅周辺などを見て回った。
 町の職員数は臨時などを含め199人(4月1日現在)で、うち町外出身者は88人。132人いる正職員でも3割を上回る42人が町外の出身だ。
 本年度採用で税務課の山浦萌子さん(18)は会津若松市出身。研修で初めて町内に足を踏み入れた。「まだ分からない地名もある。だが町を自分の目で見て、町民にもっと真摯(しんし)に向き合っていけるようになりたいと思った」と意気込みを語った。

 記録史使い状況説明

 【浪江町】浪江町の2011(平成23)年度以降の新規採用職員60人のうち町外出身者は22人で、正職員157人(4月1日現在)のうち約14%を町外出身者が占めている。
 町は新規採用職員へのオリエンテーションで、町長が講話をしたり、総務課職員が「震災記録史」を使って東日本大震災から現在までの町の状況を説明したりするなど、町を知ってもらう取り組みを進めている。
 今春採用で農林水産課の渡辺秀人さん(45)は仙台市出身。町には縁もゆかりもなかったが、「震災と原発事故で甚大な被害を受けた自治体の力になりたい」と応募した。
 研修を受け、町民や職員が本当に大変だったと実感したという。町の担当者は「町外出身者は町の地理や歴史についての知識を身に付けるのが難しい」と説明する。
 渡辺さんも「地名を言われてもすぐには分からないなど、浪江のことをまだまだ知らないが、職場の人に助けてもらいながら業務に当たりたい」と決意を口にした。