『新産業創造』...地元の役割は? 福島ロボットテストフィールド

  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 浜通りに新たな産業基盤を構築する「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で失われた産業の再生を図る国家プロジェクトだ。ロボット、廃炉、エネルギーなど多分野にわたりプロジェクトが進行する。構想の中核となるロボット研究開発拠点「福島ロボットテストフィールド」では次々と施設が完成する予定で、新産業創造への期待は大きい。一方、テストフィールド周辺では地元企業の進出が進むのかといった不安を抱く関係者もおり、政府主導の構想研究会初会合から5年が経過した今も、効果はまだ見えづらいようだ。

 世界中の企業が災害対応ロボットなどを試験する福島ロボットテストフィールド(南相馬市、浪江町)の建設が急ピッチで進められている。関係者の期待が詰まった施設だが、大企業の進出が水面下で進む一方、地元企業は進出企業との共同開発、部品製造などビジネスマッチングの実現に向けては依然、不透明のままとなっている。

 「進出企業と地元企業の間に入るコーディネーター役が必要だ」。南相馬市の精密機器部品製造「タカワ精密」取締役の渡辺光貴さん(37)は問題点を指摘する。

 渡辺さんは「ざっくりと言えば、大企業が『大きさの違うボールを3本の指でつかめるロボットアームを作ってほしい』と求めたとする。しかし、地元企業は『具体的な図面がほしい』と言う」と企業間の温度差を説明する。その背景には、地元企業の下請け体質があるという。

 ロボットの開発では「0から1」を生む作業が求められるが、地元企業が得意とするのは図面を基に「1から2、3」を作ること。そのギャップを埋めるために、渡辺さんはコーディネーターの必要性を指摘する。

 物流や情報通信が発達した今、地理的、時間的メリットは地元企業にはほぼなく、進出企業にとっても地元企業に新技術の説明や売買契約を結ぶ手間が掛かる。

 渡辺さんは「新産業への進出に向け、地元企業はビジネスのやり方の転換が求められている」と意識改革の必要性も感じている。
 ロボットの実証実験で南相馬市を訪れる研究者や大学関係者らは年々増加し、本年度は1月末現在、延べ人数で6500人に上る。ロボット関係以外の業界にもビジネスチャンスが訪れている。

 「国内外からの"理系軍団"の受け入れに向け、ホテルのインターネット予約、キャッシュレス化の整備が急務だ」。南相馬市旅館ホテル組合長でロイヤルホテル丸屋社長の前田一男さん(60)は強調する。

 ロボットの試験で同市を訪れた研究者らからは、「南相馬のホテルは予約が取りづらい」「ロボテス(ロボットテストフィールド)周辺に飲食店がない」「南相馬ではなく仙台に泊まろう」などの声が上がり、宿泊や飲食需要を逃している現状がある。前田さんは「イノベ構想のような大規模な国家プロジェクトは、今まで南相馬になかった。幅広い客層に対応できる商業面の戦略転換が必要だ」と話す。

 前田さんは「どんな経済的波及効果があるのか、そもそもロボテスとは何なのか、市民レベルの理解は低い」と指摘した上で、「人口流入に伴う経済的波及効果向上への特効薬はない。『また南相馬に来たい』という良いイメージを持ってもらえるよう、まずは南相馬の最初の『玄関口』となる旅館業者が研究者らを歓迎できるような、さまざまなアプローチを仕掛けていくしかない」と話した。

福島ロボットテストフィールド