住民対応の仕組みを 福島大行政政策学類准教授・西田奈保子氏

 

 「災害公営住宅の社会学」の共著がある福島大行政政策学類の西田奈保子准教授(48)は、時間の経過とともに今後も新たな課題が浮上するとして「住民の悩みなどについて情報収集し、速やかに対応を検討する仕組みをつくることが望ましい」と提言する。

 今回、住民は入居要件の緩和を1年以上前から県に求めていたとされる。西田氏は「(入居率低下による共益費高騰などの)無用な負担を与えるのは避けるべきだ。県は国との調整などを見越して検討を進め、もっと早く要件緩和に踏み切っても良かった」と述べた。県営123戸の整備中止については「(計画の前提になった)住民の意向は変わるもので、ある程度は仕方ない」と理解を示した。

 共益費の金額や誰が負担するのかといった枠組みは、各地でまちまちだという。西田氏は「集会所の維持管理費を行政が持つ自治体もある。負担の重い状態が続く場合、共益費の在り方自体を見直すなど、検討の余地はある」と語る。入居要件の緩和により、今後は多様な背景を持つ住民が同じ団地で暮らすようになる。阪神大震災に伴う復興公営住宅では要件緩和後に一部で生活ルールが守られず、住民の不満が出た例もあるという。

 「行政は入居の際に十分情報を提供し、住民同士も互いに理解しようとする姿勢が重要だ」と西田氏。「柔軟に対応することで、新しい住民らとより良い雰囲気に変えていける」と提案する。