「本丸」との距離は縮まらず 2号機でブリ試験採取...また延期

 

 30~40年の長期に及ぶ東京電力福島第1原発の廃炉。本県復興の大前提となる廃炉を成し遂げる上で最難関とされるのが、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しだ。本年度中と見込んでいた2号機からの試験的取り出しについて、東電は半年程度、先送りすることを決断した。延期は3度目となり、過酷な事故から丸13年が過ぎようとする中でも"本丸"との距離は縮まっていない。

 2011年3月11日の東日本大震災で県内では最大震度6強を観測。約13メートルの津波で非常用電源などが水没するなどし、運転中だった1~3号機は電源を喪失。原子炉を冷やせなくなり、炉心溶融(メルトダウン)が発生した。溶け落ちた核燃料が冷えて固まったものがデブリで、1~3号機には推計で計880トンが残ったままだ。

 東電は当初、遠隔操作機器「ロボットアーム」による試験的取り出しを21年中に始める計画だった。だが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、開発が行われていた英国からの機器の到着が遅れたほか、機器の改良にも時間を要し、2度にわたって着手時期を延ばしていた。

 東電は1月、機器を挿入するために原子炉格納容器の貫通部で、ケーブルなど堆積物の除去作業に着手。機器を入れるためには堆積物のほぼ全てを取り除く必要があるが、堆積物が想定より固着しているほか、機器の改良と性能試験にさらに時間がかかることが判明、この機器での取り出しを24年度末ごろに1年程度延期した。

 デブリの性状把握は専用機器の開発など今後の廃炉を占う重要な試金石となる。このため東電は、過去の実績でデブリに触れた伸縮性のパイプ型の機器を使うよう方針を転換した。遅くとも今年10月までの着手を目指し、原子力規制委員会に申請している。

 福島第1原発の廃炉工程は大きく三つの段階に分類される。現在は第2段階に当たり、デブリの取り出しが始まれば、工程上は最終の第3段階に移行することになる。

 東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は、デブリ取り出しの延期による廃炉完了の目標時期への影響はないと断言する。作業の習熟などが理由という。

 ただ、全容が見通せない第1原発では今後も想定外の事態に直面することが想像できるだけに、51年までの廃炉完了のイメージはかすむばかりだ。

福島第1原発1~4号機の現状

 トラブル続出東電に厳しい目

 東京電力福島第1原発で進められる廃炉作業では、作業員の人為ミスによるトラブルが相次ぎ、東電の安全管理体制を疑問視する声が上がっている。

 2月上旬には、汚染水の浄化設備がある建屋の排気口から放射性物質を含む水が約1.5トン漏えいした。協力企業作業員が手順書に書かれた弁の開閉状況の確認を怠る人為ミスが原因だった。昨年10月には増設多核種除去設備(ALPS)で、放射性物質を含む薬液を協力企業作業員が体に浴びる事故が発生。液体の飛散から汚染を防ぐ防具を身に着けていなかったことなどが原因だった。

 昨秋の事故を受け、再発防止策を他の廃炉作業でも水平展開していた中での2月のトラブルに県や県議会からも東電を厳しく非難する意見が出た。14年目を迎える廃炉作業は、県民からより一層厳しい目が向けられることになる。