双葉郡の医療機関、32.4%が再開 医師、看護師の確保課題

 

 東京電力福島第1原発事故の影響で避難指示が出された双葉郡8町村で、再開している医療機関は事故前の32.4%に当たる34施設にとどまっている。住民が安心して生活する上で欠かせない病院のうち稼働しているのは高野病院(広野町)と県ふたば医療センター付属病院(富岡町)の2施設のみで、人工透析などに対応する医療機関はまだない。地域での生活に必要な医療機関と、医療施設で働く医療人材の確保が課題となっている。

 県によると事故前の2011年3月1日時点で郡内の医療機関は病院6施設、診療所48施設、歯科診療所26施設、薬局25施設の計105施設に上った。再開の動きは進み、23年度には、なみえ調剤薬局(浪江町)が開局、富岡町保健センターが再開したものの、同年12月1日時点で病院2施設、診療所22施設、歯科診療所7施設、薬局3施設の計34施設となっている。

 同年10月時点で稼働している企業内診療所や保健センターなどを除く23医療機関の診療科は、内科や整形外科など延べ「19」となったが、人工透析に加え、泌尿器科や耳鼻咽喉科、皮膚科、産婦人科はなく、患者や妊産婦はいわき、南相馬両市など郡外で受診せざるを得ない状況が続いている。県は「医療機関の整備が引き続き必要」(地域医療課)として、再開支援を継続する方針だ。

 医療機関の整備が徐々に進む一方で原発事故の影響で不足している医療人材の確保も急がれる。郡内の病院に勤務する常勤医師数は、事故前の11年3月1日時点で39人だったが、事故直後の12年8月1日時点で3人、22年12月1日時点では4人と著しく減少している。看護職員数も事故前より少ない状況が続く。

 医療人材が不足する中で、介護保険認定率が上昇するなど、医療ニーズは増大傾向。県は、被災地の医療機関などで診療に当たる医師を県外から確保するなどの施策に取り組む。

双葉郡8町村における医療機関の再開状況