イノベ構想から10年、相乗効果に期待 浜通りに424社が立地

 

 福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想は、2014年1月の検討開始から10年の節目を迎えた。東京電力福島第1原発事故で失われた産業と雇用を回復させる国家プロジェクトで、県全体への波及も視野に入れる。「世界」を見据えた研究開発や産業化、人材育成を担うエフレイが登場したことで、構想の発展に期待が高まっている。

 県によると、イノベ構想の一環で浜通りなど15市町村に立地した企業は昨年9月時点で424社に上り、4796人の雇用を創出した。重点を置く〈1〉廃炉〈2〉ロボット・ドローン〈3〉エネルギー・環境・リサイクル〈4〉農林水産〈5〉医療関連〈6〉航空宇宙―の6分野を中心に、産業集積や交流人口拡大の一定の成果が出ている。昨年はイノベ構想の支援を受けた横浜市の企業が耐放射線カメラを国際原子力機関(IAEA)に納入するなど、先駆的事例も生まれた。

 一方、15市町村の20年の居住人口は約50万人と10年前より15・9%少ない。就業者数も16・5%減の約22万9千人。双葉郡8町村に限るといずれも70%以上減少し、依然として十分に回復していない。

 19年10月に国と県が策定した「産業発展の青写真」では、復興需要が一巡した後も全国と同様に域内総生産(GDP)が成長し、30年ごろまでに自立・持続的な産業発展を目指すとした。実現に向けてはこれまでの取り組みを継続的に検証するとともに、エフレイとの相乗効果を最大化させる戦略も鍵になりそうだ。