【震災5年インタビュー】元日本原子力発電理事・北村俊郎氏 廃炉技術伝承すべき

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 きたむら・としろう 滋賀県生まれ。慶大経済学部卒。日本原子力発電で東京の本社や東海発電所などの現場勤務を経て理事社長室長などを歴任した。自宅は富岡町の帰還困難区域にあり、現在は須賀川市に避難中。71歳。

 「廃炉に特化した専門技術者を、世代を超えて育成し、ノウハウを伝承していくべきだ」。元日本原子力発電理事の北村俊郎氏は「原発推進者」、東京電力福島第1原発事故の「避難者」の双方を経験した立場から、原発事故の廃炉の在り方、被災地復興の姿を思い描く。

 原発事故により、「ついのすみか」に選んだはずの富岡町から避難を余儀なくされた。かねてから日本の原子力の問題点も指摘してきただけに「なぜこんな事故を起こしてしまったか。原因と背景を総括できないままでは対応は迷走を続ける」と専門家として警鐘を鳴らす。

 また、本県の将来像として、廃炉産業や再生可能エネルギー産業の可能性を挙げる。「廃炉は地場産業化できる。再エネも林業や漁業などと融合した形で発展できるはず。挑戦していくべきだ」

 生きがいと収入必要

 元日本原子力発電理事で避難者の一人でもある北村俊郎氏(71)は、今後重要になる避難者の「自立」に向けた支援として「帰還した人が地域復興にできることをして、生きがいと収入を得られる仕組みが必要」と訴える。(聞き手・編集局長 菅野篤)

 ―この5年間の受け止めは。
 「原発事故の被害の深刻さをつくづく感じている。事故の後始末は想像できないほど複雑で難しい。住民を避難させてしまうような事態に悔しさがあり、事故の原因と背景を考え続けている。賠償をめぐる動きで、気持ちの面で県民の間がぎくしゃくしてしまった。地震と津波に加え『福島が2回壊された』という思いだ」

 ―福島第1原発1~3号機の原子炉内の状況はいまだ確認できない。廃炉について、どう思うか。
 「福島第1原発は事故炉で普通の廃炉よりハードルが高い。ロボットを使って調査し、確実に進めていかねばならない。ただ、機械任せにはできない。廃炉に特化した『技術者集団』を育成し、ノウハウを伝承していくべき。長期にわたる資金面でのバックアップがもちろん大事だ」

 ―国も東電も福島第2原発について明確な方針を示していない。
 「国は『東電が決めること』、東電は『国のエネルギー政策による』とする。県民感情がどうなるか探っているように思える。東電は第2原発の発電設備の損傷程度、新基準に適合させるための投資、工事にかかる月日を明らかにすべきだ。その上で運転再開したいなら、国がエネルギー政策上の必要性、地域への貢献度を明らかにし、判断根拠を県民に示すべき」

 多くの失敗から学ぶ

 ―全国の原発は再稼働への道を進んでいる。
 「『事故を経験しないと分からないのか』と感じる一方、原発の経済的恩恵が必要との気持ちも理解でき、複雑だ。ただ、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の問題を先送りにしてはいずれ行き詰まる。国や電力会社の事故対応体制も不十分。さまざまな条件を想定した訓練を重ね『多くの失敗』から学ばねばならない」

 ―その中で高浜原発(福井県)の運転差し止め決定が出た。
 「避難計画について国がもっと関与すべきと住民目線で指摘したところは評価できる。事故対応と避難対応は不可分で、別々に考えるのはおかしい。再稼働の可否は住民が納得しているかどうかも含め、総合的にみることが大切だ」

 ―国は居住制限区域と避難指示解除準備区域を来年3月までに解除する方針だ。
 「富岡、浪江の2拠点が動きだすと双葉郡の復興はようやく光が見える。川内も楢葉も買い物や病院、勤務先などを富岡に頼っていた。帰還の判断がつかなかった人の帰還も促すだろう」

 ―自立できる人たちへの自立支援、働き掛けも必要な時期だ。
 「人によって状況に差が出ており、一括して手を打つことは難しい。生活が『バブル気味』になっている人もいて、賠償や負担免除が終了になる影響は大きい。帰還した高齢者らが地域に一役買うことで、少しでも収入と生きがいを得られる仕組みが必要だ」

 見通し甘く除染先行

 ―中間貯蔵施設の用地確保が進まず、環境省不信が強まっている。
 「見通しが甘いまま、県内の除染だけを先行させた結果だ。高レベル放射性廃棄物処分場のあてがないまま原発を造り続けたやり方と同じ。国有地や県有地などを優先的に活用すべき。用地交渉にも国、県のほか地元を知る町が関わっていくべきだ」

 ―本県は今後どうあるべきか。
 「地震、津波、原発事故の被災だけでなく、今後は火山災害、水害も想定されることを踏まえ、『防災日本一』の県を目指すべき。再生可能エネルギーではまだ先進県とは言えないが、送電線がある強みを生かし、耕作放棄地とソーラー、林業とバイオマス、浮体式洋上風力発電と魚礁など農林漁業との融合で発展させられる」

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