【新春座談会(2)】 「ふくしま創生」推進 魅力と活力、次世代へ

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七転び八起きで復興のシンボルとなった会津の「起き上がり小法師」も、親子サイズで勢ぞろい。県のマスコット・キビタンを加えて明るい未来づくりをアピールする(右から)潮田さん、小泉政務官、内堀知事、五阿弥社長

 福島民友新聞社が開いた新春座談会で、内堀雅雄知事、小泉進次郎復興大臣政務官、4月開校の「ふたば未来学園高」を支援する「ふたばの教育復興応援団」17人の一人としてバドミントン元五輪代表の潮田玲子さん、本紙の五阿弥宏安社長は、震災と原発事故からの復興の在り方、人口減少社会でいかに地方を活性化させていくかなどについて意見を交わし、実現に向けたヒントを探った。また、少年、少女時代の思い出を語りながら、次代を担う県内の子どもたちに熱いエールを送った。

 【 出席者 】
 ▽知事 内堀 雅雄氏
 ▽内閣府・復興大臣政務官 小泉進次郎氏
 ▽バドミントン元五輪代表 潮田 玲子さん
 ▽福島民友新聞社代表取締役社長・編集主幹 五阿弥 宏安

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 ●震災5年目の2015年 
 五阿弥
 震災、原発事故から5年目を迎える。今年をどういう年にしたいか。
 小泉 政治としては結果が問われる1年になる。昨年末の衆院選で与党はあれほどの議席を与えられたのだから、野党の抵抗でやりたいことができなかったという言い訳はきかない。そして、何より思い入れがあるのは「ふたば未来学園高」の4月の開校式。やっとこの日を迎えられるという思い。何としても出席し、1期生の門出を見届けたい。
 潮田 ふたば未来学園高の開校もあり、リオ五輪前の(選考)レースも始まる。バドミントン界にとって大きな節目の年。今年は子どもたちを指導することに挑みたい。
 内堀 「挑戦」と「共感」を大事にする1年にしたい。福島が抱える課題は世界でも例のない初めての課題。復興を進めるために挑戦する姿勢を示し続ける。5年目を迎えて徐々に震災の風化が進むが、国内外に多くの情報を発信することで、共感を得て支援をもらい、自分たちも何らかの力を返していきたい。

 ●進む風化をどう防ぐ 
 五阿弥
 風化への不安が県民の中にある。今年は2020(平成32)年の東京五輪まで、あと5年。東京五輪までには福島が復興、再生を遂げていなければ国際社会への約束違反になる。風化をどう防ぎ、復興に結び付ければ良いか。
 小泉 私のように継続的に被災地に足を運んできた人間が珍しいと思われることが、皮肉だが、風化の一つの表れ。風化を実感していら立つこともあったが、今は思いのある人がやり続ければいいと思う。華々しく東京五輪が開幕する一方で、被災地にはまだ仮設住宅があるような二極化はあり得ない。そうならないように全力を尽くす。
 潮田 震災当時は現役選手だったので、自分が世界で活躍し、励みに思ってもらうことが一番だと思っていたが、競技を離れた今、自分に何ができるかが正直分からない。忘れているわけでなく、思いはあるけど、それを行動に移すことが難しい。そう感じているアスリート仲間を「ふくしま未来学園高」の応援団の活動などにたくさん巻き込んで一緒に応援したい。

 ●ふたば未来学園高 
 五阿弥
 本県教育復興のシンボルになる「ふたば未来学園高」をどんな学校にしたいか。
 小泉 子どもたちが自分で夢を狭めず、可能性に満ちた前向きな思いを持って飛び立つことができるような場にしたい。初めに文部科学省職員から「福島で中高一貫校をつくる」と話を聞いた時、「ずいぶん普通だな」と思った。あれだけの経験をした所に新しい学校をつくるなら、各界の協力を得て他にない学校をつくるべきだと。「今までの教育界で成し遂げられなかったことをする学校にすべき」と言い続けていたら、思いに共鳴してくれた人たちが結集した。それから、先生が一人の大人の人間として生徒の信頼を得る存在であり続けることが求められていて、先生の魅力も、この学校の重要な要素になる。
 潮田 スポーツの世界でも環境がトップ選手をつくる。どんなに才能があっても周りの支えや環境が伴わなければ、一人で強くなることは絶対にできない。衣食住全ての面でそういう環境を整えることがとても大切だと思う。
 内堀 ふたば未来学園高をつくる上で考え方の基本となったのは、富岡高を中心とした双葉地区教育構想。中高連携でサッカー、バドミントン、ゴルフ、国際的な対話力など自分に合った能力を育て、才能をどれだけ進化させるかに重点を置いた。震災後5年目の段階で、原発事故のあった双葉郡に学校ができて、そこに子どもたちが集まって自分自身の才能を伸ばす。そういう魅力的な学校をつくることは、本県が震災と原子力災害を乗り越え、復興することのシンボルになる。新しい学校で、子どもたちには進路や、自分が置かれている逆境、困難を切り開く力を身に付けてほしい。

 ●子ども時代の思い出 
 五阿弥
 子ども時代で印象に残っていること、励ましになった出会いは。
 潮田 結果的に五輪に行けたが、ずっと自信がなかった。五輪を目指したのも高校卒業後、社会人チームに入ってから。高校の時、指導者から「自分を過小評価するのはやめなさい」と言われた言葉が、とても印象的で「もっとできる」と背中を押してもらって初めて自分は進むことができた。
 小泉 親、家族、親戚、地域の皆さんに感謝したい、と大人になって思っている。まず「ならぬものはならぬ」と幼いころからたたき込んでくれたのが父。幼稚園の時、夕飯でアジの干物のメニューに、駄々をこねると、父が笑いながら「そうか、分かった。食べなくていいぞ」と言ったことで「ああ、わがままは通用しないんだな」と。その教えが残っている。もう一つ、人生のターニングポイントになったのは、中学3年の三者面談。担任が父に「進次郎君には、もっと教室でリーダーシップを取ってもらいたい」と言うと、父が「先生、進次郎はそのままでいいと思います。おそらく政治家の息子として見られるから、良いことをしても悪いことをしても目立つ。だから、あまり前に出るのはやめようという意識が働くんでしょう」と返してくれた。毎日、家にいなくて電話で時々話すくらいだったが、自分が一番代弁してもらいたい思いを言ってくれた。「親が自分のことを見てくれている」と思うと、自然に自信を持つことができた。また、自分はシングルファーザーの家庭で育ったが、さみしさを全く感じずに育つことができたのは、地域の皆さんが「親の離婚に触れないようにしよう」「さみしい思いをさせちゃいけない」と支えてくれていたからだと大人になって気付いた。だから、ふたば未来学園高の子どもたちにとっても地域の存在、支えというのは、とても大切だと思う。
 内堀 自分は音楽少年で、高校まで運動がとても苦手だったが、「このまま苦手なままいくのか」と考え、大学で急に合気道の体育会に入った。全くできないゼロからのスタートだったが、努力は裏切らなかった。毎日流す汗がどんどん報われ、体がどんどん締まる。体が変わることで心も変わり、自信がつく。それが社会人になってからも自己肯定感につながっていると思う。勉強も頑張らなければならないが、体を動かすことも大事だと思った。

 ●避難者自立への道筋 
 五阿弥
 5年目を迎えても今なお12万人余りの避難者がいる。避難者への支援はもちろん重要だが、同時にどうやって自立と自律を促していくかも必要では。
 内堀 12万人超が4回目の正月を自宅で過ごすことができないという苦しい状態を、どう元の状態に戻していくかが大切な仕事だが、実は12万人という言葉にリスクがある。12万人は一つの固まりでなく、それぞれ避難元や家族構成などによって立場や置かれている状況が異なる。12万人という言葉をひとくくりにせず、一人一人のことを考えてどこまで対応できるかが勝負だ。多岐にわたる要望に応じ、除染や生活インフラの再起、復興公営住宅の整備などに、きめ細かく対応していくことが何より大切だ。
 小泉 自立というのは、とても大切だし、とても難しい。なぜ多くの方が避難の現状にあるのか、やはり国の責任もあり、加害者としての思いを決して忘れてはいけない。一方で、自立なくして福島や東北の将来がないということは誰もが思っているが、その自立を説くべきなのは誰か。あらゆることで「ならぬものはならぬ」という規範的役割が政治に求められる。ただ、それを言うには政治への信頼が不可欠。今、その信頼が失われている中で「自立」を説いても「自分たちが何をしたか分かっているのか」と言われてしまう。そういう意味で、とても慎重にならなければならない。

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