【 塙町・常世温泉 】 伝説の地で『男のロマン!』 美人の湯で評判

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ヒノキの香りが漂う浴場。長年通い詰めるファンも数多い

 塙町の中心部から車で約15分。「"美人の湯"として知られる温泉がある」との評判を聞いた。その名も「乙女姫(おとひめ)の湯」。名前を聞くと、男一人で訪れるのは少し恥ずかしい気もしたが、行ってみることにした。

 温泉の周りには田園風景が広がる。のどかな地域だが、東白川郡といわき市を結ぶ交通の要所。江戸時代は宿場として栄えていたそうだ。「私が子どもの頃は、この辺りにも商店街があって、栄えていた名残があったんだよ」。女将(おかみ)の鈴木ハツエさん(70)が教えてくれた。

 乙女姫の湯は1994(平成6)年に開湯した。田園地帯の中に、周りと稲の色が違う田んぼがあることに着目した鈴木さんの父、故利之さんが中心になって掘り当てた。鈴木さんは「会社を定年退職したばかりの父にとって、温泉は"男のロマン"だった」と振り返る。その後、ほかの親族が温泉を経営していたが、2年前、鈴木さんが父の思いを受け継いだという。

 温泉の名は、今から1000年ほど前、湖だったこの地域にすみついていた竜を退治した伏見源八の恋人、芝原乙女姫が湧き水を使っていたという言い伝えに由来する。温泉を掘り当てた後に、由緒ある湯であることが分かったそうだ。入り口には乙女姫を模した木像が飾られている。この木像は伝説を知った人から贈られたという。

 ◆うれしい心遣い

 乙女姫に由来し、美肌を生む湯。伝説に思いをはせながら男湯「浦島の湯」に入った。広さは女湯「乙女姫の湯」の半分ほどだが、4、5人は入れる。肩までお湯につかり、足を伸ばせる広さだ。浴槽に使われているヒノキの香りがよく、窓の外には庭園が見える。町中心部からそれほど離れていないのに、まるで別世界。とてもぜいたくな気分になった。温度は40度ほどで心地よい。長風呂が苦手なのに、30分以上入っていられた。泉質は炭酸ナトリウムが豊富。美肌効果が高く、アトピーや切り傷、神経痛などに効くという。

 湯から上がると、鈴木さんが牛肉、野菜を焼いて待っていてくれた。食材は畜産農家を営む鈴木さんの家族が育てた自家製。牛肉はしっかりした歯応えがあるが、中は柔らかい。

 ほかにもローストビーフ入りのラーメン、すき焼きなどのメニューが人気。昼食を注文しなかった客にも、風呂上がりにコーヒーを振る舞っている。「ほっとした気持ちになってほしい」と鈴木さん。温泉そのものの良さはもちろんのこと、こうした心遣いも人気の秘訣(ひけつ)だろう。常連客には「ゆっくりくつろげるのが良いところなんだから、あんまり宣伝しないでよ」と冗談めかして言われるという。

 人に紹介しないのはもったいないと思う。しかし常連客の気持ちも分かる。人が少ない時期や時間帯を狙ってまた訪れたい。

 【メモ】常世温泉 乙女姫の湯=塙町常世北野字水元406。日帰り入浴は500円(税込み)、1泊は1万800円(同)。

塙町・常世温泉

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 【「おいしいココア」が人気】塙町中心部にあるJR磐城塙駅の駅舎には、塙町コミュニティプラザが併設されている。1993(平成5)年に完成した建物には、駅のホームに沿って連なる八つの屋根がある。森林をイメージして造られた。このうち北側三つが同プラザの屋根で、町の産品を販売したり、町民らの力作を展示している。喫茶コーナーもあり、「おいしいココア」(税込み400円)が人気だ。同じ建物の南側には町立図書館もある。

塙町・常世温泉

〔写真〕町の物産品が並ぶコミュニティプラザ