【 天栄村・岩瀬湯本温泉 】 初めてでも懐かしい「茅葺き屋根の宿」

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光の加減でやや白く濁って見える湯は、昔から切り傷や胃腸病に良いとされている

 岩瀬湯本温泉の開湯は、約1200年前の平安時代にさかのぼるとされる。時の帝(みかど)・嵯峨天皇の病を癒やしたとの伝承があり、古くから湯治場として親しまれてきた。1841(天保12)年創業の「ひのき風呂の宿 分家」は、当時の風情を今に伝える宿として湯本温泉を守り続けている。

 天栄村の国道118号「鳳坂(ほうさか)峠」を南会津方面に走る。標高822メートルの頂上からやや下ると、雄大な羽鳥湖と周辺の山々を一望できる展望台がある。風景を眺め清涼な空気に体をさらすのも一興。山肌の残雪に冬の名残を感じながら次第に集落へ入る。3月にもかかわらず茅葺(かやぶ)き屋根につららの垂れ下がるL字形の建築様式「曲がり家」の古民家が見えてきた。分家だ。

 伝承によると、湯本温泉は嵯峨天皇に仕えた星3兄弟に始まる。病に倒れた天皇を救うため兄弟は神のお告げに従い薬となる「湯の花」をこの地に求めた。温泉を探り当てた兄弟は湯の花を天皇に献上。病はたちまち治ったという。天皇は兄弟をこの地に住まわせ、以来兄弟は温泉を守ることになったそうだ。そういえば、分家6代目は星光さん(60)。村には星姓が多いと感じていたが、星さんは伝承との関連を指摘し「自然の恵みと礎を築いた先祖に感謝している」とほほ笑む。

 ◆荒波乗り越えて

 自慢の風呂は宿名の通りヒノキ造り。浴室に入ると、かすかな木の香りに和む。泉質は塩化物泉で水素イオン指数(pH)は6.9。切り傷ややけどなどに効くとされる。温度は40度強であまり熱くない。じっくりと肩までつかると、次第に体の芯から温まっていくのを感じる。若干とろみのある湯は透明だが、外からの光を成分が反射するのか、やや白濁して見えるのが面白い。浴槽に散る茶色い湯の花を見つけ、伝承といにしえの世界に思いをはせる。星さんによると、皮膚病のために湯の花を持ち帰り、療養に使う客もいるという。温泉がもたらす癒やしは今も昔も変わらない。

 聞こえるのは、浴室に響き渡る掛け流しの音のみ。目を閉じて、音と湯のぬくもりに全身を委ねた。せわしない日常からかけ離れた閑寂な、優しい空間。ふぅっとため息が漏れる。凝り固まった心身がほぐれ、軽くなる。上がった後もなお感じる湯の名残は、しばらく体を温めてくれた。

 戊辰戦争では「官軍にも賊軍にもくみしない」と宿を焼き払ったが、明治初期に建て替えられ、築150年となった。歴史の荒波にさらされながらも分家はたくましく乗り越えてきた。茅葺き屋根の手入れや建物の維持、客が快適に過ごせる空間づくりに余念がない。

 「祖父母の家を訪れたような懐かしさ、雰囲気を味わってほしい」。分家を象徴するような穏やかな表情の中に、先祖代々受け継がれてきた宿、そして歴史ある温泉を守る強い意志を見た。

 【メモ】ひのき風呂の宿 分家=天栄村湯本字居平7。日帰り入浴料500円。不定休。

天栄村・岩瀬湯本温泉

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 【食感が楽しいヤーコンメンチ】天栄村と白河市を結ぶ県道沿いに位置する道の駅「羽鳥湖高原」。ヤーコンや天栄米、地酒をはじめとした村自慢の特産品を取り扱っている。ツーリングやスキー、ドライブなどでの来村者が足を止め、村産品に舌鼓を打っている。おすすめはヤーコンメンチ(税込み200円)。サクサクの衣に包まれたジューシーな具の中で、シャキシャキのヤーコンが存在感を放つ。具にはみそが練り込まれているので、ソースはお好みで。イベントなど特別な日には、米粉パンに挟まれたヤーコンメンチバーガーとなって登場。味わえたらラッキーだ。営業時間は午前9時~午後6時(12月1日~3月31日は冬季営業のため同5時30分)。

天栄村・岩瀬湯本温泉

〔写真〕シャキシャキのヤーコンが存在感を放つヤーコンメンチ