【平成7年】須賀川・女祈祷師事件 集団生活...「魂清める」と信者暴行

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今もなお残る事件現場。無造作に生い茂る草木が時の経過を物語る一方、事件の衝撃は近隣住民の記憶に刻まれている

 事件の舞台となった民家は、事件から間もなく四半世紀を迎える今も、ひっそりと立ったままだ。草木が生い茂り、手入れされている様子はない。近隣住民は「思い出したくない。もうたくさんだ」と口を閉ざす。

 日本中を震撼(しんかん)させたオウム真理教による地下鉄サリン事件と同じ1995(平成7)年、須賀川市でも宗教絡みの事件が発生した。閑静な住宅地で起こった本県犯罪史に残る異様な事件は「福島でもオウム事件か」と周囲を騒然とさせた。

 民家の中では連日、女祈祷(きとう)師江藤幸子元死刑囚=逮捕当時(47)、2012(平成24)年9月死刑執行=らによる信者への暴行が続けられていた。魂を清める悪霊払いと称した暴行は「御用」と呼ばれた。木製の太鼓ばちや足などによる陰惨な殴打。顔や手足などが腫れ上がった被害者は自ら立ち上がれないほど衰弱、最終的には死に至った。

 須賀川署長として当時、捜査に携わった斎藤克彦さん(76)は「少人数による集団生活。決定権は教祖にあった。序列が付いた信者同士でけん制が始まり、せっかんに発展したようだ」と神妙な表情で思い返す。

 信者の多くは家族の病気など悩みを抱える人たちで、弱みがあった。信者の心理を知り得る江藤元死刑囚は神格化された。その「教え」は絶対だったとみられ、江藤元死刑囚の指示に従う形で、信者の家族同士でも暴行が行われるほどだった。

 なぜ、死亡するほどの暴行が行われるようになったのか。法廷で明らかになったのは、「江藤元死刑囚の私情」だった。愛人関係だった男性信者への独占欲や他の女性に対する嫉妬、金銭トラブルなどが引き金となり、暴行がエスカレートしていった。「背景にあるのは結局、男女関係と金だった」(斎藤さん)。

 被害者は、江藤元死刑囚の「教え」を信じていたとみられ「死者が起き上がる」と疑わなかった信者もいた。当時の捜査関係者によると、江藤元死刑囚は「私には神が乗り移っている。神事だった」などと供述していたという。

 ただ、江藤元死刑囚について「ごく普通の人で、会えばあいさつした」との印象を抱く近隣住民もいた。宗教が絡んだ、閉ざされた空間での異様な集団生活。近所の70代女性は「変だと思っても、なかなか気付かないもの。早く忘れてしまいたいが、誰も忘れられない」。狂気を極めた事件の衝撃は、今も残っている。

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 女祈祷師殺人事件 須賀川市小作田の民家で1995(平成7)年7月5日、県警による傷害事件の家宅捜索中、男女6人の変死体が見つかった。民家では、祈祷師江藤幸子元死刑囚が中心となり、悪霊払いと称して信者同士による暴行が日常的に行われており、6人は連日の暴行で死亡していた。殺人容疑などで江藤元死刑囚らが逮捕された。

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 【平成7年の出来事】 
1月・ふくしま国体冬季大会(スケート)
2月・ふくしま国体冬季大会(スキー)
7月・須賀川市の女祈とう師宅で6人の変死体が見つかる
8月・磐越道いわき―郡山間が開通
9月・ふくしま国体夏季大会
10月・ふくしま国体秋季大会
   ・本県初の民間FM「ふくしまFM」が開局