【4月28日付社説】復興公営住宅の調査/広域的支援の確立につなげ
県社会福祉協議会は、県内の復興公営住宅約5千戸の入居者を対象にした実態調査の結果を公表した。震災から13年が経過する中、全体の4割が単身世帯で、このうち7割が60歳以上の高齢者の1人住まいであることが分かった。
復興公営住宅は、東京電力福島第1原発事故の避難者を対象にした住まいとして、県内各地に建設された。公営住宅団地には、避難する前に住んでいた自治体(避難元)が異なる入居者らが混在している場合が多い。そのため、支援側も複数の機関が関わっており、一つの団地の入居者の概要を把握することも難しい状況だった。
今回の調査結果は、避難元と避難を受け入れている自治体(避難先)の社会福祉協議会(社協)の担当者が、それぞれの情報を共有することで初めて分かった全体像となる。県社協には、避難の長期化が避けられない状況を踏まえ、調査結果を関係機関が連携して入居者支援を推進していく基盤として役立ててもらいたい。
調査によれば、福祉や医療サービスを利用せずに日常生活を送ることができないと判断された世帯は約3割に上っている。日常生活に支障がでるストレスがある世帯、震災を原因とする大きな喪失感を感じたり、自殺の心配があったりする世帯はそれぞれ全体の1割に満たないが、見守りが必要になっている。
県社協は調査に基づき、年度内に72の団地ごとに買い物支援や交流の場の創出などを組み合わせた生活支援策をつくる考えだ。団地を一つのコミュニティーとして課題を抽出し、解決策を見いだす試みとして評価できるが、訪問で緊急性が高いと感じた世帯には迅速な支援を実施するなど、スピード感のある対応を心がけてほしい。
入居者を見守る社協担当者の人件費は、復興財源から賄われている。調査の背景には、2025年度に国の第2期復興・創生期間が終了する前に実態を把握し、十分な体制を構築する狙いもあった。県社協は連携の枠組みとして郡山市に避難先、避難元の社協合同の「社協連携避難者支援センター」を設置したばかりで、今後は他地域への水平展開を目指している。
本県の社協が担った自治体を超えた被災者支援は、他に類を見ない貴重な経験だ。今後予想される南海トラフ地震などの災害においても、避難が自治体内で完結することは考えにくい。県社協は、調査に基づいた対策を広域かつ長期的な支援の全国的なモデルに磨き上げ、26年度以降の事業継続につなげていくことが重要だ。
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