【聖光4強・飛躍の夏(1)】原点回帰で成長 泥くさくひたむきに

 
準決勝後、あいさつを終えてベンチに戻るナイン。ユニホームは黒く染まっていた=20日、甲子園球場

 甲子園の黒土でユニホームは真っ黒に染まっていた。20日行われた第104回全国高校野球選手権大会準決勝、福島県代表の聖光学院と仙台育英(宮城)との戦い。序盤に大差をつけられながらも、泥だらけになって最後まで諦めず、懸命にプレーする聖光ナインの姿があった。

 聖光学院が今大会、準々決勝の壁を破って初めて4強に進出、県勢として51年ぶりの快挙を成し遂げた。準決勝は悔しい敗戦となったが、その躍進の背景には、甲子園出場が当たり前ではなかった時代への「原点回帰」があった。

 「自分たちの頃は下手くそだったけどハートは強かった。今年のチームは、そんなところが当時と似ていると感じる」。聖光学院が甲子園に初出場した2001(平成13)年当時のメンバーで、4番打者を務めた二本松市の会社員塙裕之さん(38)は自身の現役時代と重ね合わせる。

 この年、福島大会決勝で日大東北と死闘を繰り広げた。延長11回表に4点を取られたが、驚異的な粘りで5点を奪ってサヨナラ勝ち。初の甲子園への切符を手にした。どんな状況でも全力を出し切るひたむきなプレーは「聖光野球」の象徴となった。その後、聖光学院は甲子園の常連となっていった。

 昨夏、福島大会準々決勝で光南に敗れ、夏の甲子園連続出場が13で途切れた。前年は新型コロナウイルスの感染拡大で甲子園が中止となり、2年連続で聖地から遠ざかった。

 思いがけず、甲子園出場は当たり前ではなくなった。このことが、泥くさくひたむきな聖光野球の原点を見つめ直すきっかけになった。昨年、先輩たちの敗戦に強い衝撃を受けた主将赤堀颯(はやと)(3年)を中心に、ナインは日本一を目指すという強い決意で猛練習に励み、急成長していった。試合では泥くさく戦い、逆境でのたくましさも身に付けた。福島大会で優勝、3年ぶりの夏の甲子園では強豪相手に勝利を重ねた。

 斎藤智也監督は「選手たちが心で野球をすることを高めた結果、ここまでこられるんだと改めて勉強になった」と成長を遂げた選手をたたえる。原点回帰で強さに磨きをかけ、再び甲子園で躍動した聖光ナイン。その思いは次の世代も受け継ぐ。

 2年生ながら4番として甲子園全5試合に出場した三好元気は「次の夏は3年生の思いを背負って、たどり着けなかった日本一を絶対に取る」と力を込める。

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 今年の夏の甲子園で、初の4強りを果たし全国の高校野球ファンにその強さを印象づけた聖光学院。例年を上回る結果を残すことができた要因に迫るとともに、今回は届かなかった優勝への道筋を探る。

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