嚢胞はがん前兆ではない

 

 県民健康調査の一つである「甲状腺検査」は、震災時点において福島県に在住していた18歳以下の全県民を対象とした甲状腺に対する検査です。

 甲状腺に関わる病気は数多くありますが、それらは大まかにホルモンのバランスが崩れてしまうものと、「できもの」ができてしまうものに分類されます。それぞれを診断するための検査は異なり、ホルモンバランスは採血、できものは触診や超音波(エコー)検査がまず行われるのが普通です。甲状腺検査は、その当時のあったかもしれない放射線被ばくなどの影響により、現在の甲状腺の状況がどうかを見守るための検査であり、エコーの検査が重点的に行われています。

 超音波検査を行う際、最も多く見つかるのは「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる液体のたまりです。1ミリ程度の小さなものも数えれば年齢により、子どもでも2、3人に1人以上見つかります。嚢胞は、いわゆる「がんの前ぶれ=放っておくとがんになってしまう」ものでは決してありません。前回の検査では見つかったのに今回はなくなっていたり、逆に別の場所に新しくできていたりします。数センチ以上となるような場合を除き、新しくいくつか見つかったからといって処置の必要はありません。