基準値確認して海に放出

 

 全ての物質は目に見えない小さな「陽子・中性子・電子」の粒がそれぞれ何個かずつ集まってできています。セシウム134や137など、物質の後ろに付いている数字は、陽子と中性子の粒の個数の合計でした。ここまで紹介してきたトリチウムは、陽子一つと中性子二つ、電子一つでできています。陽子と中性子の合計が三つなので、トリ(3の意味)でした。

 その一方、原発で燃料として使われているのはウラン235です。ウラン235に中性子の粒をぶつけると、その235個が分裂して熱が生じます。この分裂が起こる時に新しい中性子の粒が生まれるため、それが次のウランにぶつかってまた分裂と熱を生じます。原発ではこの「核分裂」のエネルギーを用いて水を沸騰させ、タービンを回して電気をつくっています。

 この反応を起こしている途中にトリチウムは作られます。例えば、ウラン235が分裂する時に二つに分裂せず、三つに分裂し、その分裂した一つがトリチウムである場合があります。制御棒と中性子がぶつかって反応し、トリチウムが作られる場合もあります。放射性物質でない水素の仲間と中性子が反応してできることもあります。

 このように、原子炉の中では電気をつくる際のさまざまな過程でトリチウムができていました。そして、原子力施設でできたトリチウムは基準値を確認し、主に海へ放出されていました。