広域避難、情報交換が重要

 

 前回は、避難指示による避難先についてお話ししました。避難指示は市町村長が発令するものなので、災害対策の多くや、避難先は自身の市町村内で完結することを前提として考えられることが多いです。そのため、市町村をまたいだ大規模な広域の避難については、対応が難しくなる傾向があるのでした。

 その一方、今回の原発事故の教訓を踏まえ、原子力災害の場合については、市町村や都道府県の境を超えた広域の避難先が前もって決められるようになりました。例えば、日本で最も原子力施設が密集している地域の一つである福井県であれば、その避難先は兵庫県と奈良県に、その近くの滋賀県であれば大阪府と和歌山県に、京都府であれば兵庫県と徳島県の各市町村にというように避難元と避難先の市町村がマッチングされています。

 このマッチングは、コロナ禍が続いていることもあり、避難元と避難先の行政同士の交流や情報交換が十分に行われている所と、まだそうではない所とさまざまではあります。しかし一般の自然災害に比べて、より広域の避難が必要な可能性のある原子力災害では、このような広域の避難対策が少しずつ進められています。