「茶道元年」へ、会津から発信 蒲生氏郷の歴史、誘客に生かす

 
(写真上)七日町で抹茶を提供している抹茶専門カフェ「濃い春」。オープンから約半年となり、小濃さん(左)は抹茶文化の広がりを感じていると話す、(写真下)抹茶提供店舗などを紹介するパンフレット

 会津と茶道は縁深い。約430年前に会津若松の城下町の礎を築いた会津領主・蒲生氏郷は千利休に師事して茶の湯を究め、また三千家(表千家、裏千家、武者小路千家)誕生の由縁は会津にある。福島県会津若松市でこの茶道との関わりに着目し、新たな観光ツールに育てていこうという動きが出ている。関係者は「今年を会津における『茶道元年』にしたい」と意気込む。

 会津若松市の鶴ケ城には利休の子・少庵が建築に関わった茶室「麟閣」があり、同市七日町には父子の再会にまつわる言い伝えから「めぐりあい観音」として信仰を集める常光寺など、茶にまつわる深い歴史・文化が存在する。観光関係者によると、こうした歴史は会津でも意外に知られていないという。

 「歴史的背景や物語といった文化は揺るぎない価値がある。文化を感じてもらえれば、一過性の物見遊山でなくなる」。七日町のにぎわい創出に取り組む七日町通りまちなみ協議会副会長の庄司裕さん(77)は強調する。

 同協議会は今年、茶道文化の発信に力を入れ始めた。市街地周辺で抹茶を提供している店舗を紹介するガイドパンフレットを1万部作製し、会員事業所や旅館、ホテル、観光案内所などに設置。また28日には初めての取り組みとして、協議会会員の店舗を会場にした茶会を予定している。店舗の一つ「濃い春」は昨年10月にオープンした。店を開いた小濃(おのう)夏美さん(29)は「茶道に関心のある人が来店してくれて、茶への関心が広がっている気がする」と話す。

 協議会が求めるのは「何人が来た」という人数カウントではなく「いかに経済効果があるのか」だ。せっかく観光客に来てもらっても消費行動に結び付かなければもったいない。「価値あるものに観光客はお金を出してくれる。その価値というのが文化なんです」と庄司さんは狙いを説明する。

 同市では鶴ケ城さくらまつりの一環としてAIZUまちなか茶会が開催されているが、最近は茶道に関するイベントが増えている。市観光課が事務局を担う会津若松観光ルネッサンス協議会は昨年秋、市内で茶道体験ワークショップ「蒲生氏郷が愛した茶の湯」を開いた。日本文化を「体験して学ぶ」ことがポイントだ。麟閣を会場にした茶道体験ワークショップも開催されるなど、茶道文化の発信が活発化している。観光関係者は「ある一定のスポットだけでなく、どんどん広がって会津若松市が『茶道のまち』となってほしい」と期待をかける。

 ■会津と茶道 千利休が豊臣秀吉の怒りを買って切腹に至った際、千家断絶を危惧した会津領主・蒲生氏郷は利休の子・少庵を会津でかくまった。少庵はその後、徳川家康や氏郷の尽力によって京都に戻ることを許され、千家再興を図った。その子孫が表千家、裏千家、武者小路千家の三千家を興し、現代の茶道隆盛の礎を築いた。少庵が会津にいる時に鶴ケ城内に建てられたのが茶室「麟閣」だ。