東京電力の不誠実な対応に憤り 「新しい指針」期待と課題

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東京電力の不誠実な対応に憤り 「新しい指針」期待と課題

 東京電力福島第1原発事故で被った避難や放射線への不安などの損害に対する損害賠償。この3年で、避難の費用や慰謝料などの直接的な影響から、生活再建へとその形を変えてきた。国の原子力損害賠償紛争審査会の指針を基に東電が基準を定め、国から公的資金の投入を受けて賠償金を支払う仕組みだが、指針を逆手に取った東電の「不誠実」な対応に、被災者の不満が和解申し立てや提訴という形で噴出している。仕組み自体を疑問視する声も広がっており、原子力賠償は節目を迎え、検証や制度の転換が求められている。

 原発事故に伴う損害賠償の指針を検討する文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は昨年12月、新しい賠償指針(中間指針4次追補)をまとめた。新指針は、避難者の移住を支援する住宅取得費用の賠償額上積みに加え、これまでになかった避難指示解除後や事故6年目以降の賠償の在り方も示した。避難者の生活再建につながるとの期待もあるが、賠償の支払いが確実に進むかは不透明だ。

 避難先で新たに住宅を取得する場合、賠償額と取得費用に開きがあり、生活再建につながらないとの課題がある。新指針では、避難先で住宅を取得する帰還困難区域などの住民に、元の住宅の新築価格の最低8割を賠償金で補償し、住宅取得を促す仕組みを整えた。

 事故後6年目以降の賠償では避難者に1人700万円を一括賠償する。避難指示の解除後は1年間を目安に精神的賠償の支払いを継続する。今後の賠償金支払いの見通しがより明確になったことで、住民の生活再建が前進するとみられる。

 新指針を受け東京電力は賠償の独自基準を策定しているが、賠償開始は4月以降になる見通し。避難者の生活再建には元手となる賠償の早期支払いが急務だ。山林の財物賠償など国の指針が示されたものの、賠償が始まっていない損害もある。東電の迅速な対応が求められる。

 審査会がこれまでに示した賠償指針で東電は、被災者個人に1人月額10万円の慰謝料(精神的損害)、不動産(土地・建物)、仕事ができなくなった就労不能の損害に賠償金を支払っている。事業所などは直接的な営業損害だけでなく、風評被害による売り上げの減少分も対象。

 時効への不安当面解消 

 原発事故で生じた損害賠償請求権の消滅時効を3年から10年に延長する特例法が昨年12月の参院本会議で可決、成立した。時効に対する当面の不安は解消された。

 時効延長については、昨年5月に原子力損害賠償紛争解決センターに仲裁を申し立てた人に限り、3年目以降も請求が認められる別の特例法が成立していた。しかし、民法の規定で、申し立てをしていない被災者は事故から3年となる今年3月に請求権を失う恐れがあったため「不十分」との批判が後を絶たなかった。

 新しい特例法は時効延長に加え、事故から歳月が過ぎて健康被害が出た場合などを想定し、賠償請求権を行使できる「除斥(じょせき)期間」を「損害が生じてから20年」とすることも明記した。

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