震災を糧に"心の指導" 独自の道徳資料、人を思いやる心

 
震災を糧に

震災後のエピソードなどが掲載された道徳教育資料集の第2集

 震災を経験した本県だからこそ、命を大切にし、人を思いやる心を育てようと、県教委は児童生徒の震災と原発事故の体験をまとめた道徳教育資料集を独自に作成した。県内小、中学、高校の授業で活用したり、県外に向けて発信している。

 資料集は2013(平成25)年度に第1集「生きぬく・いのち」、14年度に第2集「敬愛・つながる思い」をテーマに作成。全3部作とする予定で、現在、郷土愛や本県の未来への思いをテーマにした第3集を作成している。県教委は道徳の教科化も見据え、資料集を活用していく方針だ。

 資料集には、震災直後の支援に対する感謝や、原発事故に伴う友人や家族と離れての生活、避難先での経験などを通して子どもたちの感じた思いが、ストレートにつづられている。

 放射線学び情報発信へ 教員ら工夫 

 県内の教育現場では、教員らが工夫を重ねて生徒らに放射線について教えている。教員は「ふるさとの現状を理解して、これからを考えられるようになってほしい」と話す。

 2月、福島市の福島一中では2年生約180人が授業でグラウンドや中庭の放射線量を調べていた。木の近くや校舎の周りで毎時0.1〜0.2マイクロシーベルトを観測。生徒たちは数値を校内の地図に書き込み、場所によって放射線量が違うことを学んだ。

 同市では、小学1年から中学3年を対象に、2012(平成24)年の2学期から年間少なくとも2時間の放射線教育の授業を続けてきた。被ばくを防ぐための「放射線防護」から、震災当時を思い出して気分が悪くなった時に自分を落ち着かせる呼吸法まで、内容は多岐にわたる。事故から4年となるが、教える内容も変えてきた。「風評被害を防ぐには」など、福島の今後を生徒が議論する時間も増やした。福島一中で理科を教える菅野泰英さん(48)は「放射線教育は科学の話だけでは足りない。知識を身に付け現状を理解して、情報を発信できる生徒を育てたい。子どもたちにどう語り継いでいくのか、専門家も含めて総動員でぶつかっていく必要がある」と話した。

 小高工と小高商高、統合で「新産業」学習 

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難区域となっている南相馬市小高区で2017(平成29)年4月をめどに小高工と小高商の両高校が統合し、ロボット工学や再生可能エネルギー技術などの新産業を学べる学科が新設される。

 本県沿岸部では、ロボット産業や新エネルギー産業の集積地を目指す「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」が進む。沿岸部の地域再生を目的としており、学科の新設は復興に貢献する人材を地元で育てるのが狙いだ。計画では両高校を統合して「産業革新科」を新設。従来の学科の一部も残す。

 両校は現在、同じ南相馬市原町区に移転している。仮設校舎での授業を強いられているが、統合されれば小高工高の元の校舎を使用する方針。しかし、統合は避難指示の解除が前提となる。南相馬市は16年の解除を目指しているが、2校が17年4月に統合できるかは不透明な部分も残っている。