【起き上がり小法師】〔南相馬・八島鉄工所〕新分野進出、雇用守る

 
「『まちおこし』から『まちのこし』へ、地域のため、できることに取り組んでいきたい」と話す八島社長(左)

 浪江町を中心に、鉄骨の成型や鉄骨建築の設計施工を行っていたが、東京電力福島第1原発事故によって新地町に避難して操業再開。だが、鉄骨関連の受注確保が難しかったことから、2012(平成24)年4月に浪江町に近い南相馬市原町区に移転して再スタートを切った。

 しかし、同市に移った後も鉄骨建築や相双の工場での鉄骨の需要がほとんどなくなっていた。雇用の維持のため、土木関連や除染作業など新たな事業分野への進出を決めた。

 八島貞之社長(47)は「自分たちが受注する(小売店舗などの)規模の工事は、地元に人が戻ればこそ生まれる。避難が続く現在の状況では地元に帰還する人たちは少ないだろう」と指摘する。「地元の人を雇用して地域経済に貢献するためには、新たな分野への進出が必要だった」と振り返る。だが、「補助金制度は制約が厳しい。従来の事業では申請が可能だが、新たな分野への進出の際にはなかなか申請が難しい」と悩みを明かす。

 浪江町商工会工業部会長を務める傍ら、震災前から「なみえ焼そば」の推進役を務めてきた八島社長。郷土愛から「太王(だいおう)」役も買って出てなみえ焼そばのPRに力を入れる。「浪江については『まちおこし』から『まちのこし(残し)』へ転換していかなくてはいけない。地域のため、今までやったことのない分野の仕事であってもできることに取り組んでいきたい」と将来を見据える。