浪江復興の『新ステージ』 「まち残し」へ...賛否の声も解除実行

 

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が31日に一部解除される浪江町。さまざまな課題を抱えながらの解除に賛否の声がある中、町は「まち残し」のために解除時期を先延ばしすることなく実行に踏み切る。「町に関わっていきたい」という町民の声を受け止め、「人口はある程度戻る」と町は確信。町内に戻る人たちの心配や不安を取り払うための努力を国、県と共に続けながら、復興の新たなステージに向かう。

 中心市街地を再生の象徴に

 【現状と課題】浪江町は中心市街地の再生を図り、復興のシンボルとする。中心市街地は従来、歴史、文化、商業などの中心地として町の内外から多くの人たちが集い、にぎわいを見せていた。
 復興に向け、町の出発点はゼロよりも後退した「マイナス」からだった。今、ようやく中心市街地の再生計画エリアの復旧が終わった。上下水道、道路、生活環境の整備など、間に合わせ程度だが、マイナスからゼロに戻った。町は「これからがスタートライン」との思いで、復興計画の実現を目指す。
 町は避難指示解除に向けた住民懇談会で多くの課題があることを再認識した。線量の問題、除染の遅れ、医療機関・商業施設・生活環境の整備など...。課題が多岐にわたり、帰町に対して心配する町民の声があるのも一つの事実。馬場有町長は「総じて早く町を元の状態にしてほしいという、町民の共通した思い」と受け止めている。
 避難指示が解除されるこれからは、さらに課題を一つずつ克服し、町民が安心して町に戻ってもらう環境を一日でも早く整えなければならない。「中心市街地を再生させ、魅力ある町並みを形成させる」。馬場町長は、スタートラインから一歩、さらに一歩と踏み出す覚悟だ。

 半数以上は「帰町」意向

 【住民アンケート】町は1~2月、県内外10カ所で開いた避難指示解除に向けた住民懇談会で、帰町の考えについて来場者にアンケートを行った。その結果、「すぐ帰りたい」が10.1%、「数年で帰りたい」が8.1%、「いずれ帰りたい」が12.1%、「避難先と町の二重生活」が21.3%だった。1249人が来場し、951人が回答した。
 これについて馬場有町長は「半数以上は何らかの形で町に足を運び続ける意思を持っている」と前向きに捉えている。
避難先などで事業34% 町の被災事業者に対する個別訪問では、町の事業者の事業再開意向を調査。訪問した町の994事業者のうち、「地元で事業を再開済み」「地元で継続中」は2%、「避難先などで事業を再開」は34%、「休業中」は56%。「地元での事業再開・継続を希望」の合計は25%だった。