前原子力規制委員長・田中俊一氏に聞く 誤った認識見直すべきだ

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「正しい知識で自分で考えなければ福島の復興はない」と強調する田中氏

 前原子力規制委員長の田中俊一氏(73)=福島市出身=は「『0.23』に科学的根拠はなく、食品に関する規制も含めて見直すべきだ」とする認識を示す。

 ―政府が除染の目安とした空間放射線量(毎時0.23マイクロシーベルト)の妥当性について議論が始まる。
 「事故直後に実測ができなかったため、空間放射線量毎時0.23マイクロシーベルトはあくまでも仮定の数値だった。個人線量の実測により(国の評価式は)3、4倍過大評価だと分かった。仮定して実験値が出たら修正するのは科学的に当然。いつまでも一時の古い仮定を引きずっているべきではない。0.23マイクロシーベルトにもはや科学的根拠はまるでなく、福島の復興には避けては通れない議論になる」

 ―年間被ばく量1ミリシーベルトや空間線量毎時0・23マイクロシーベルトが事故当時のままだ。影響をどう考える。
 「福島の産業、特に農業や漁業へのダメージが計り知れない。事故後、一般食品の規制値は放射性セシウムで1キロ当たり500ベクレルから100ベクレルになった。安全性を強調したかったのだろうが、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の試算では、(放射性セシウムを含む食品を食べ続けることによる内部被ばくは)500ベクレルで年間0.051ミリシーベルト、100ベクレルでは年間0.008ミリシーベルトと、いずれも1ミリシーベルトには満たない。日本が批准する国際食品規格委員会(CODEX)は千ベクレルと、国際社会と比較しても日本の基準は異常だ。自ら規制していて外国や国内での販売は無理がある。県が音頭を取って見直しを求めるなどの対応をしてもよいのではないか」

 ―事故から7年がたつ。実態に即した空間放射線量とは。
 「過大評価とされる現在の評価式でも避難の基準となった年間20ミリシーベルトで考えると、空間線量は毎時3.8マイクロシーベルトが妥当。県内の空間線量は帰還困難区域も含めてほとんどが3~4マイクロシーベルト以下となっており、全ての地域で避難指示を解除できる状況にはなっている。解除まで時間がかかるほど、(古里に)帰る決心は鈍くなるだろう」

 ―毎時0.23マイクロシーベルトを上回ると「被ばくする」や「危険」との意見や、今春に避難解除地域で控える小、中学校などの再開を疑問視する声もある。
 「間違った認識だ。国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)は100ミリシーベルト以下の放射線では健康への影響は認められないとし、『影響がある』と考えるのは飛躍し過ぎている。さらに2016(平成28)年の福島事故白書で『将来の確率的影響については、甲状腺がんを含めて被ばくを原因とするがん患者の増加は考えられない』ともしている。あくまでも年間1ミリシーベルトは放射線の管理目標であって健康リスクの指標ではない」

 ―生活の拠点を構える飯舘村に開校する小中一貫教育校では放射線に関する授業も予定されている。
 「実際に村で採れた野菜や山菜などを子どもたちに測ってもらい、その数値が何を意味するのか考えてもらうことを想定している。放射線に関する正しい知識を学んでもらい、(食べられる、食べられないなど)自分で判断できる大人に育ってほしい」

 ―空間線量について、県民はどう接すればよいか。
 「でたらめな考えが広まっているが、福島に住む県民は正しい科学的知識を身に付けるべきだ。自分の判断ができないようでは、福島の再建は到底ない」