待望の海の家...イベント続々 いわき・四倉、看板など準備進む

 
「一人でも多くの人に来てもらえるよう努力していきたい」と話す公平さん=いわき市・四倉海水浴場

 いわき市四倉町の四倉海水浴場は15日の今シーズンの海開きに向け、久しぶりに設営される海の家や看板の設置などの準備が進む。新型コロナ対策の規制が緩和され、観光業に回復の兆しが見える中、関係者は入り込み客数が昨年を大きく上回るよう期待を寄せる。

 震災前の2010年は市内9カ所に海水浴場が開設されており、計約80万人が訪れた。四倉海水浴場は同年の入り込み客数が10万1667人で10万人を超えていたが、被災からの復旧工事を経て6年ぶりに再開した16年には3万878人に減少。さらに、新型コロナの影響を受けた昨年は1万6142人まで落ち込み、震災前の2割を下回った。

 だからこそ今シーズンでの再起に懸ける関係者の思いは強い。「この海を再び盛り上げるため、海の家の復活などイベントを計画し、しっかり準備していく」。四倉海水浴安全対策実行委員長の公平和俊さん(81)は、穏やかな波打ち際を見渡して決意を新たにする。

 実行委は今シーズン、サーフィンやビーチバレーボールなどの各種大会の誘致、子ども向けのイベントなどを計画した。新型コロナ禍前のにぎやかな海水浴場の姿を取り戻そうと準備に余念がない。公平さんは「人が集まるような考えを練り、一人でも多くの人に来てもらえるよう努力していきたい」と語った。

 その目玉の一つが海水浴客にとって憩いの場となる海の家の復活だ。海の家は新型コロナ禍で休業を余儀なくされただけに、実行委には今シーズンの開設を望む声が寄せられていた。

 「生まれ育った四倉の海を元気づけたい」。地元の漁師本間仁史さん(45)が海の家の運営を担おうと手を挙げた。ラーメンやフランクフルト、かき氷といった海の家でおなじみのメニューを用意し、海水浴客をもてなす考えだ。本間さんは「素晴らしい海を前に、たくさんの人に楽しんでもらいたい」と意気込む。

 迫る放出時期「不安」

 海水浴場の関係者に暗い影を落とすのが、東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出計画だ。

 「できれば放出を始めるのは海水浴期間の後にしてほしい」。海洋放出に向けた設備面での準備が整い、政府が「夏ごろ」とする放出開始時期の判断が迫っており、海水浴場の関係者らからは客足への影響を懸念する声が漏れる。

 公平さんは「風評被害などで影響が出るのか、不安がある」と胸の内を明かし「何か問題が起きてからでは遅い。政府は対策をしっかりと検討してほしい」と語気を強めた。