放射線教育"試行錯誤" 県内小・中学校75%「難しさ実感」

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放射線教育

 子どもたちに放射線について基礎的な知識を深めてもらい、心身共に健康な生活を送ってもらおうと、本県が取り組む放射線教育。震災、原発事故から5年目となる今も、教育現場の試行錯誤は続いている。

 県内の教育関係団体でつくる「大震災後の福島県の教育復興を進める会」は3月、県内の分校と私立、国立を除く小、中学校に実施したアンケート結果をまとめた。全体の66.8%に当たる465校から回答を得た。【グラフ1】は「放射線教育に難しさを感じているか」と尋ねた設問への回答で、4分の3の学校が「難しさ」を感じていると答えた。

 難しさの理由として挙がった具体的回答をまとめたのが【グラフ2】で、指導内容・方法が未確立であることや、教員間で理解に差があることを挙げる学校が多かった。

 原発事故からの時間の経過に伴い、放射線に対する子どもたちの関心の薄れを指摘する教育現場の声も多くなっている。空間放射線量が年々下がっていることや、厳格な放射性物質検査で食品の安全性が守られていることなども関心の薄れに影響しているとみられる。しかし、放射線そのものや健康影響などを正しく理解している子どもが多いわけではない。

 「理解が進んだから放射線を気にしなくなったのではなく、周囲が以前より騒がなくなったから気にしなくなっただけのことだ」という教育現場からの指摘もある。

 こうした中、放射線教育に取り組む関係者が抱く危機感は、「子どもたちが将来、進学や就職などで県外に出た際、本県の現状や放射線についてしっかり説明できるのか」ということだ。問題は、県外では県内に比べて、放射線について正しい理解が進みにくいことにある。

 消費者庁が首都圏などの消費者約5000人に継続的に実施している意識調査によると、本県産食品の購入を「ためらう」という回答は2月時点で17.4%。昨年8月の前回調査の結果(19.6%)より下がったものの、一定程度の風評は根強く残っている。

 県外では、本県で行われている厳格な食品検査体制について知る機会も限られる。本県で育った子どもたちは将来、放射性セシウムが基準値を超えた食品は流通していないことや、内部被ばく検査で放射性セシウムを検出するのは野生のキノコを食べ続けるなどのごく一部のケースに限られることなどを、周囲にしっかり説明する必要に迫られる可能性がある。

 今後の放射線教育のあるべき姿はどのようなものなのか。岡田努福島大総合教育研究センター教授(47)=科学教育・科学史=は「学校ごと、教員ごとの取り組みに格差が生じている。まずは個別の教員が放射線の授業で取り組んだ内容を確実に継承していく仕組みづくりが必要」と、体制づくりを急ぐべきと提言する。

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 放射線をめぐる子どもたちの学びの現状や、これからの課題を探る。