【 会津若松市・東山温泉(上) 】 あの人物が由来...歴史ロマン浸る

 
滝が望める露天風呂は、東山温泉の豊かな自然が楽しめる

 会津藩士が義を貫き戦い抜いた戊辰戦争。その舞台になった会津若松市のシンボル鶴ケ城がそびえる市内中心部から車を走らせること約10分、町中から少し離れた東山のこの地に、古くから人々に愛されてきた温泉街がある。

 開湯は1300年ほど前。3本足のカラスに導かれた行基上人がついていった先の「伏見ケ滝」の近くから、湧き出る源泉を見つけたという伝説が残っている。創業130年を超える「庄助の宿 瀧の湯」の斎藤純一・五代目湯守会長は「東山温泉は新選組副長土方歳三が入ったとも伝わっているんです」と歴史ロマンあふれる話を教えてくれた。会津民謡「会津磐梯山」の歌詞に登場する、お酒と温泉が好きな謎の人物「小原庄助さん」も訪れたとされる。このことが名前の由来になっており、多くの人の心と体を癒やしてきた。

 大浴場では、開湯の伝説にも登場する名所「伏見ケ滝」を近くで眺めることができる。夜には滝が青、赤緑などにライトアップされ、幻想的な光景が広がる。6カ所ある貸し切り露天風呂も自慢。中でも屋上にある「月美の湯」と「星空の湯」は、湯船から望む市内の町並みや、町と星空との共演を堪能できる。泉質は硫酸塩化物泉で、水素イオン指数(pH)は8.55。リウマチやすり傷に効果があるという。温度は41~42度と、ゆっくりつかるのにちょうど良い。

 いつまでも入っていられるような肌触りの湯。材料にもこだわりがあり、大浴場にはヒノキや高級銘木の「青森ヒバ」を使用した浴槽を置き、木材そのものの心地よい香りが広がる。

 にぎわいを守る

 お風呂上がりは、お土産を見るのも楽しみの一つ。フロント近くに設けられたお土産コーナーには、自家製醸造みそなどで作ったタレに、馬肉や会津地鶏を漬け込んだ「庄助酒彩吟醸漬」など会津の特産品を使ったお土産が並ぶ。料理として提供していたが、宿泊客からの要望を受けて商品化した。

 歴史ある温泉街だが、後継者不足などから廃業になる旅館も少なくない。瀧の湯は、温泉街に少しでも明かりをともし続けようと、閉館したホテルをリニューアルし、昨年、簡易滞在型温泉宿「月のあかり」をオープンさせた。女性の一人旅やビジネスマンを対象に、近隣の飲食店などと提携して食事を出すことで全体の料金を抑えている。斎藤会長は「廃業問題に立ち向かうための新しい存続の道になれば」と力を込める。

 あえてひらがなを使った「をんりーわん」を合言葉にサービスを展開。温泉街のにぎわいを絶やさず、後世に残すことができるよう奮闘しようとする地域を愛する従業員の熱い思いが、居心地の良さを生んでいるのかもしれない。

 入ってよし。食べてよし。次は誰かと一緒がいいなと空の助手席に思いをはせながら帰路に就いた。

 【メモ】庄助の宿 瀧の湯=会津若松市東山温泉108。日帰り入浴はタオル付きで大人1200円、子ども(3歳以上小学生以下)600円。貸し切り露天風呂は宿泊客専用。

会津若松市・東山温泉

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 【武家の生活...今に伝える】東山温泉の入り口を下ったすぐ先には、会津の歴史と人々の当時の生活の様子などを見ることができるミュージアム「会津武家屋敷」がある。会津藩家老西郷頼母(たのも)邸を復元した家老屋敷では江戸時代中期の建築様式や、家具、調度品などから武家の生活をのぞくことができる。また、徳川幕府の旗本松平軍次郎の代官所で、県指定重要文化財の旧中畑陣屋などが移築復元され、会津の歴史に浸ることができる。起き上がり小法師(こぼし)や赤べこの絵付けなどの体験学習コーナーも随時開催している。時間は4~11月は午前8時30分~午後5時、12~3月は午前9時~午後4時30分。入場料は大人850円、中学・高校生550円、小学生450円。

会津若松市・東山温泉

〔写真〕会津武家屋敷で見ることができる家老屋敷