いわき・磐栄運送が酒蔵『再生』 長野の日本酒「御湖鶴」復活

 
1万本造られた「御湖鶴」

 「新酒鑑評会で金賞を取り、福島の酒と競い合いたい」。いわき市の磐栄運送が破産した長野県の酒蔵を取得、地元で愛された日本酒を復活させた。年明けには会津産の酒米「五百万石」などを使った酒造りに挑む。村田裕之社長(58)は「福島と長野の合作をつくりたい。その一歩を踏み出せた」と意欲を見せる。

 取得したのは長野県下諏訪町の唯一の酒造会社「菱友醸造」。同酒造会社が造っていた日本酒「御湖鶴(みこつる)」は諏訪大社に奉納され、伝統行事「御柱祭」で振る舞われるなど有名な地酒だった。

 だが、菱友醸造が業績の悪化で昨年破産し、酒造りは途絶えてしまった。取引先を通じて話を聞いた村田社長は地元の後押しもあり酒蔵を取得。事業譲渡を受け、酒類関係の免許を得て「諏訪御湖鶴酒造場」を設立した。

 磐栄運送は運送業のほか農業も手掛けるが、酒造りはゼロからのスタートだった。醸造のための設備を整え、従業員を集めた。そんな中、御湖鶴復活の話を聞いて名乗り出たのが杜氏(とうじ)の竹内重彦さん(47)。長野県の別の酒蔵で働いていたが「新しいチャレンジをしてみたい」と協力を申し出たという。

 長野県産の酒米「美山錦」を使って10月に仕込みを開始。以前を超えるような味を目指して一升瓶で1万本を造った。竹内さんは「初搾りは緊張だった。とても感慨深い」と振り返る。11月に地元で開いた御湖鶴の完成祝賀会には多くの人が駆け付けた。諏訪大社から、奉納してほしいとの申し出もあったという。御湖鶴は地元で販売した。

 来年は五百万石などを使って約3万本の製造を目標にしており、3月ごろの販売予定だ。本県での流通も視野に入れる。村田社長は「酒蔵を建て替えて、見学できるようにすることも考えている。活気あふれるようにしたい」と力を込める。