田村監督コラム〈6〉WALK TO THE DREAM 心強いサポーター

 

 ◆いわきFC・田村雄三監督

 ◆喜怒哀楽を共有したい

 コロナ下になってから、2シーズン目が終わろうとしている。サポーターは手拍子のほかにもボードを使うなど応援に工夫を凝らしてくれていて、そうした姿は確実にピッチに届いている。とはいえ、以前の大声援を恋しく思うことも。皆さんも同じ気持ちだろうか。

 忘れられない光景がある。2016(平成28)年の県2部時代、試合前のスタンドに、横断幕を見つけた。そこには「いわきから世界へ」と書かれていた。おそらく一番最初にクラブに向けて掲げられた横断幕。見つけた瞬間は衝撃だった。思わず写真を撮り、クラブスタッフに報告した。うれしさとともに「サポーターはこうやって増えていくんだ」と思ったことを鮮明に覚えている。

 いわきのように、カテゴリーを一歩ずつ上ってきたクラブにいる選手は、こうした応援のありがたみを実感しやすいかもしれない。大声援が当たり前の世界では、そのありがたみになかなか気が付けないだろう。

 毎試合終了後、記者会見の始めにサポーターへの感謝を述べているが、これはきれい事ではない。ホームにもアウェーにも多くのサポーターが駆け付けてくれていて、本当に心強い。

 選手が成長できるのもサポーターがいるからだと思っている。時に優しく、時に厳しい言葉は選手の成長の糧になるからだ。応援も批判も、全てはクラブや選手への愛情あってのこと。選手は寄せられた期待を受け止めるだけの自覚や覚悟を持たないといけない。

 消極的なプレーにはブーイングしてくれても構わない。いわきは「90分間止まらない倒れない」を大切にしているクラブだ。簡単に倒れたら一緒に怒ってほしい。もちろん、良いプレーにはぜひ拍手を。一緒にクラブの価値観をつくっていきませんか。

 たむら・ゆうぞう 群馬県出身、中央大卒。2005年に湘南ベルマーレ入団。現役時代のポジションはMF。08年からは選手会長を務めた。10年に引退後、湘南ベルマーレ強化部スタッフを経て15年、いわきFC強化部入り、17年から監督。38歳。