大倉社長コラム〈91〉WALK TO THE DREAM リバプール戦観戦

 

◆いわきスポーツクラブ・大倉智社長

「熱狂」こそ強さの根源

 昨年末から年始にかけて、田村雄三監督らとイングランドやドイツを巡る欧州旅行をした。目的はサッカー観戦。リーグやカテゴリーを変えて5試合を観戦した。その中で一番の衝撃を受けたのが、日本代表MF遠藤航が所属するイングランドプレミアリーグの名門リバプールの試合。世界最高峰を体感し、「こういうクラブになりたい」という思いを強めた。

 観戦したのは、当時2位のリバプールがホーム・アンフィールドに首位のアーセナルを迎えた首位決戦。うまさはさることながら、プレーの迫力とスピード感に圧倒され、あっという間に終わってしまった。そんな世界屈指のハイレベルな戦いで、湘南時代にGMや社長として見てきた航が活躍していたことも、この上なく誇らしい気持ちだ。

 スタジアムの雰囲気にも身震いがした。歌やチャントの大合唱、良いプレーに対する声援のつくり出す応援の圧がすさまじい。アウェーチームがなかなか勝てない理由もよく分かった。

 選手の技術が高く、ボールが簡単に下がらずにゴール前まで進む。こうしたサッカーの本質を、サポーターは楽しみ、それを欲しているように思う。声援には「ゴールに向かえ」という期待が込められていた。

 帰りには思わずクラブのマフラーを買ってしまった。気持ちの高ぶりや応援したい気持ちをお金に変える、スポーツビジネスの本質をどっぷりと堪能した。

 翌日は航の案内の下、クラブハウスを見学した。施設管理者からフロントスタッフ、コーチ、ユルゲン・クロップ監督まで、施設にいたあらゆる人が明るく、にこやかにあいさつしてくれて、そこにも驚かされた。みんながこのクラブで働くことに誇りを持っているのだろう。ビッククラブの強さの根源に触れた気がした。

 おおくら・さとし 川崎市出身。早大商学部卒。現役時はJリーグの柏レイソルやジュビロ磐田などでFWで活躍。引退後はセレッソ大阪チーム統括ディレクター、湘南ベルマーレGM、社長などを歴任し、2015年12月から現職。54歳。