田村監督コラム〈18〉WALK TO THE DREAM 活躍続くMF岩渕

 

◆いわきFC・田村雄三監督

◆「外から見る時間」糧に

 監督就任から勝ち点を取り続けているが、まだまだこれからだ。降格圏などシーズン終盤のことを考えては駄目。前半戦で負けた相手も多く、年間で2回も負けられない。勝ち点を取り返す意味でも一戦一戦いわきらしく、諦めずにゴールに向かっていきたい。

 ここまで数字で目立っているのがMF岩渕弘人だ。第22節の大宮アルディージャ戦から4試合連続でゴールを決め、勢いに乗っている。

 昨年10月のデゲバジャーロ宮崎戦で右前十字靱帯(じんたい)と外側半月板を損傷する大けがを負い、手術やリハビリなど苦しい時間が続いた。まずは約8カ月間メンタル的に不安な中、ピッチに戻りたいという強い気持ちでリハビリに取り組んで壁を乗り越えてきたことを評価したい。

 活躍の要因の一つは、外からチームを見たことが考えられる。けがをしてチームの戦いを外から見る時間が増えたことで、自分がいざピッチに出た時にどういうプレーをしたいのかというイメージが生まれやすくなったと思う。結果的に復帰をしてから、けが前よりも周りがよく見えていると感じる。彼自身、予測する力があり、嗅覚が優れている選手だが、サッカーに対する真面目さが結果につながっている。

 ただ、岩渕1人の頑張りだけで結果を残せているわけではない。同時に彼を生かそうと考えながら動いている選手がいる。そんな選手がいるからこそ岩渕、そしてチームの結果につながっている。岩渕は特にチームのみんなに感謝しながらプレーしていると思う。

 復帰から途中出場が続いているが、90分間走れるようにならなければ戻ってきたとは言えない。右足のけがによって体のバランスは一度崩れている。今後、自身の体と向き合っていくことがより求められる。

 たむら・ゆうぞう 群馬県出身、中央大卒。2005年に湘南ベルマーレ入団。現役時代のポジションはMF。08年から選手会長を務めた。10年に引退後、湘南強化部を経て15年にいわきFC強化部入り。17~21年に監督を務め、今季途中から再び指揮を執る。40歳。