不通駅間で「代行バス」 JR常磐線・いわき−仙台間つなぐ

 
不通駅間で「代行バス」 JR常磐線・いわき−仙台間つなぐ

解体工事が進められたJR常磐線富岡駅。改札口や駅名標は震災遺構としての活用が決まった=1月

 震災で大きな被害を受けたJR常磐線は原発事故に伴う帰還困難区域の設定も加わって竜田(楢葉町)−原ノ町(南相馬市)駅間と相馬(相馬市)−浜吉田(宮城県亘理町)駅間は運行休止のままだ。ただ、竜田−原ノ町駅間を走る代行バスの運行開始に伴い、代行バスを使えばいわき−仙台間が1本につながった。

 JR東日本と内閣府は、津波で駅舎や橋脚が流失するなど大きな被害を受けた富岡駅、大野(大熊町)−双葉駅間の第1前田川橋について、新年度から設計に着手することを明言。富岡駅は1月から解体作業が始まり、同駅の改札口や、駅名が記された「駅名標」などを震災遺構として富岡町が保存することも決まった。

 【常磐線代行バス乗車ルポ】"生活の足"へ定着期待

 原発事故の影響で不通が続くJR常磐線竜田(楢葉町)−原ノ町(南相馬市)駅間の代行バスが1月31日に運行を開始してから1カ月となる。実際に乗車し、運行状況や乗客の声を取材した。

 2月24日午前9時35分、竜田駅発の代行バスに乗り込んだのは自分を含めて3人。50人乗りのバスはがらんとしていた。原ノ町駅発の始発の乗客も7人と予想より少なく感じたため運転士に聞くと、「平日は大体このくらいです」。混み合うのは週末で、浜通りの企業に勤務したり、復旧作業のために県外から働きに来ている人々が帰るために多く利用しているという。

 車窓から、津波に遭った沿岸部やバリケードが張られた帰還困難区域の街並みを眺めていると、女性添乗員が、アナウンスで国道6号沿線の現状や名所などを説明してくれた。観光客向けの声色ではなく、落ち着いた口調。「少しでも福島のことを知ってもらいたくて、自主的に続けている」。降車後に女性添乗員は話してくれた。

 代行バスの運行は1日に朝夕の2往復のみ。"生活の足"として利用するには使いにくい印象を受ける。原ノ町駅発のバスで乗り合わせた男性(50)も「もっと便数が多ければね」と話した。

 それでも、運転免許を持たないお年寄りなどにとっては貴重な交通手段。かつての人の流れを取り戻す足がかりにもなる。国道6号の車両通行自由化に加え、代行バスとはいっても公共交通機関で浜通りの南北が結ばれた。浜通りの大動脈に再び血が通い始めたような思いがした。