被災者支える活動 劇団120○EN、"福島の魅力"舞台で

 
被災者支える活動 劇団120○EN、

「地元の良さを伝えたい」と福島市を舞台にした演劇を手掛けている劇団120○EN

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故に見舞われた本県を大勢のボランティアが支えてきた。震災直後は津波によるがれき処理が中心だった活動も、震災から丸4年を迎え、仮設住宅でのイベント開催やそこで生活する住民の生きがいづくりなど、被災者に寄り添った活動へと変わってきた。被災者自身もボランティアとして活動を続け、支え合いながら復興へと歩む本県の姿を発信している。

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の影響に苦しみながらも、20代の若者が福島の元気な姿を届けている。2011(平成23)年3月11日、福島市で上演していた劇がクライマックスに差し掛かった時、舞台上にいた福島大演劇研究会のメンバーを激しい揺れが襲った。倒れそうになるスピーカーや照明。公演は中止となった。「3カ月以上も練習してきた芝居だった。思いを伝えきることができず悔しかった」と当時3年生だった清野和也さん(25)は振り返った。

 清野さんらは衣装の着物姿のままで雪がちらつく、どんよりとした曇り空の屋外に避難した。凍える姿を見かねてコートをかけてくれた人もいたといい「福島の人たちの温かさを肌で感じた」と話す。原発事故による避難でメンバーは一時離れ離れとなった。原発事故で苦しむ人がいる中、「演劇をやることは不謹慎なんじゃないか」との葛藤もあったが、「もう一度みんなで続きを」との思いで11年4月に「劇団120○EN」を旗揚げ。見に来てくれた友人の前で演じた。以来、地元の良さを多くの人に知ってもらおうと、福島市の民話や伝記、史跡などをモチーフにした劇を手掛け、表現している。

 清野さんは脚本を担当している。市内を散策してネタを探す中、「この街を好きになってほしいとの願いが強まった」と明かす。現在は団員11人が5月の「POP演劇祭」に向けて練習に励む。清野さんは思いを巡らせて言葉を紡ぐ。「震災で変わってしまったことも多いが、震災が地元を見つめ直すきっかけになった」