日大工学部名誉教授・長林久夫氏に聞く 地域の自主防災が大切

 

 本県沿岸部の堤防建設などに携わる長林久夫日大工学部名誉教授に津波対策などを聞いた。

 ―沿岸部の復旧状況は。
 「道路や橋梁(きょうりょう)の復旧事業は9割以上が完了し、海岸、河川の堤防と港湾も9割以上で着工済み。今後は、かさ上げした堤防と防災緑地、道路といった『多重防御』に加え、宅地のかさ上げなどが進んでいくだろう」

 ―震災では津波が堤防を越えてきた。
 「数十年から百数十年に1度の規模の津波を堤防の高さの基準となる設計津波とした。堤防の高さは地域の実情などを考慮して一部区間を除き7.2メートル。高さを仮に東日本大震災の(最大級の)津波に設定しても、津波を完全に防ぐことができるとの保証はない。多重防御を基本に被害を最小限に食い止めたい」

 ―住民が心掛けることはあるか。
 「災害は必ず起きると想定することが必要。安全性を担保できる堤防を造っているが、被害軽減には住民の連携が不可欠であり、地域の自主防災組織の存在が鍵を握る。避難区域では避難指示解除後の地域のコミュニティーづくりが進んでいくことが望まれる」

 ながばやし・ひさお 長野県出身。日大大学院工学研究科修士課程修了。県環境審議会長、県津波対策検討会座長などを歴任。68歳。