富岡町、民家から『救出』進行中 民有文化財、町史編さん活用へ

 
富岡町内の民家から民有文化財を搬出するプロジェクトチームのメンバー=2014年12月

 全町避難が続く富岡町では、県や町が管理する文化財は既に運び出されているが、町民所有の民有文化財は民家や蔵などに残されたままとなっている。町は民有文化財の搬出と保護を目的にしたプロジェクトチームを2014(平成26)年に創設、住宅の解体除染が進む中、町民の足跡が記された文化財の救出に取り組んでいる。

 対象となるのは古文書などに限らず、会合の資料や商売で使う帳簿、メモ、写真、手紙など住民の生活の様子が記されたあらゆるもの。住民が避難しコミュニティー維持が困難となっているため、地域の歴史をまとめる材料とし、住民の古里への思いをつなぎ留めることが狙い。また、町ではここ約40年にわたり町史が出版されておらず、町内から救出した資料を町史の編さんに活用したい考え。

 さらに、町は第2次町災害復興計画の実施計画で、新年度中に資料の展示などを行うアーカイブ施設の開所を盛り込んでいる。町の成り立ちと原発誘致の経緯に加え多重災害に見舞われた町内の爪痕を後世に語り継ぐ拠点とする。町教委の三瓶秀文主任学芸員(36)は「長期避難が続く中で、町民の町とのつながりを感じてもらう機会としたい」と活動の意義を話した。