【起き上がり小法師】〔楢葉・にいつま企画〕「不動産取引」貢献誓う

 
「不動産取引を通して復興に貢献したい」と語る新妻さん

 楢葉町に土地や建物など不動産の売買と賃貸を扱う会社を起こし、原発事故による避難指示解除から1年が過ぎた9月から本格的に事業を始めた。社長の新妻宏明さん(57)は「不動産取引を通して古里の復興に貢献したい」と力を込める。

 新妻さんは、避難で傷んだ自宅の解体を決断した際「古里のために何ができるか」と人生を見つめ直した。「土地や建物の問題で困っている人が多いのでは」。33年勤めた会社を早期退職し、経験のない不動産の仕事に飛び込むと決心。専門学校に1年通い、宅地建物取引士の資格を取得した。

 自宅跡地に事務所と住居を構え、事務担当の妻玉美さん(57)と起業。社員寮や作業員宿舎を求める復興関連企業から引き合いがある一方、帰還が進んでいない現況では住民のニーズに応える場面はまだ少なく、経営は手探り状態が続く。

 地域の課題は、住民と作業員らが共生するまちづくりだ。新妻さんは「土地や建物が荒れないよう企業に提供したい人がいる。ただ近くに知らない人が住むと住民は不安を感じる。社宅にする場合、企業側に看板で表示を求めれば、不安は和らぐはず」と提案する。

 住民の生活再建に向け、町などは「空き家・空き地バンク」を展開するが、新妻さんは「協力する不動産業者が自社のホームページで物件をPRできず、歯がゆい思い。不動産業者間で情報を共有できれば、輪が広がっていく」と訴える。