地域と結び...輪を広げる 避難者支援コーディネーター活動変化

 

 東京電力福島第1原発事故で散り散りになった避難者の実態を把握し、どのように支えていくかは時間がたつにつれて解決の難しさが増す課題の一つだ。避難者の孤立化には新型コロナウイルスの影響も密接に関わる。発足1年を経た「避難者地域支援コーディネーター」の活動から求められる支援の在り方を考えた。

 「点」から「面」へ―。県社会福祉協議会は避難者支援の取り組みについて、新たな活動へ移行を進めている。年月の経過に伴い、避難者を取り巻く環境が変化しているためだ。これまで活動の中心だった生活支援相談員は、きめ細かな個別支援に力を注ぐという「点」に重きを置いていた。今後は「点」の支援を続けながらも、避難者を地域コミュニティーに結び付け、その輪を広げていく「面」の取り組みが求められている。

 「面」の支援の担い手となっているのが、県社協と各市町村社協が昨年度から配置した避難者地域支援コーディネーターだ。コーディネーターが中心となって復興公営住宅の入居者同士や地域との交流を深めるきっかけづくりなど、地域支援を充実させる。

 「点」と「面」の両方の観点から支援が必要なのは本県特有の事情がある。東日本大震災による地震、津波の被災者が暮らす災害公営住宅は、震災前まで生活していた市町村にあり、入居者も同じ市町村の住民同士の場合がほとんどだ。

 これに対し、原発事故による避難者向けの復興公営住宅は、県内各地に72団地が整備され、同じ団地でも避難元の市町村や年代が異なる人が混在して暮らす。さらに12年が経過する中で避難者ごとに帰還の意向も多様化し、コミュニティー形成が難しくなっている。

 こうした課題を踏まえ、コーディネーターは入居者や地域住民らが交流できるサロンやイベントの運営、団地自治会と地元町内会の橋渡しなどの役割を担う。本年度は21市町村の社協で32人が任命された。

 県社協避難者生活支援・相談センター長の佐藤正紀さん(50)は「入居者が避難先で安心して暮らすためには地域の人との交流が欠かせない。団地ごとにさまざまな課題を抱えており、コーディネーターを中心に改善できるようにしたい」と力を込める。

 半数が単身世帯、高齢化浮き彫り

 県社協は本年度、全ての復興公営住宅で入居者の実態調査に乗り出す予定だ。これまでも実態把握に努めてきたが、地域、団地ごとの課題を洗い出し、次の支援につなげる狙いがある。

 モデルと位置付けた調査は昨年度、郡山市の復興公営住宅17団地、約570戸(空室を含む)を対象に先行して行われた。

 単身が半数近くを占め、入居者の高齢化が改めて浮き彫りになった。一方、日常生活についての調査結果が買い物支援や団地の集会所を活用した居場所づくりなどの取り組みにつながった。