酒造り文化...ゼロから創る 南相馬・ハッコウバ、新たな挑戦へ

 
「ゼロから酒造り文化を創りたい」と話すハッコウバの佐藤さん=南相馬市小高区

 原発事故で避難指示が出され、居住人口が一度ゼロになった南相馬市小高区。「ゼロから酒造り文化を創っていきたい」。小高の地で醸造所「haccoba(ハッコウバ)」を経営する佐藤太亮さん(31)は、日本酒の製造過程にホップやハーブなどを加えた「クラフトサケ」と呼ばれる酒造りに取り組んでいる。12月にはJR小高駅内に3カ所目となる醸造所が完成予定で「新たな挑戦をしていきたい」と意気込む。

 佐藤さんは埼玉県出身で大学卒業後、IT関連企業に就職した。しかし「酒造りに挑戦してみたい」との思いを忘れられず、会社を退職し、小高での酒造りを決意した。

 新潟県の酒蔵で酒造りを学ぶと、酒とコミュニティーの「発酵」の願いを込め、2020年にハッコウバを設立した。

 佐藤さんは「前は家で『何を混ぜたらおいしくなるかな』って感覚で酒造りをしていた」と懐かしみ、昔のレシピを参考にしたり、自由に発想したりして、これまでに約40種類の酒を造ってきた。

 7月から隣の浪江町でも酒造りを始めた。12月には小高駅の醸造所でノンアルコール酒に初めて挑戦するほか、酒と電車を堪能するツアーも思い描く。今後はベルギーにも醸造所を構える計画で、夢は広がっていく。佐藤さんは「酒造りの楽しさを発信し、文化として生き続けるようなものにしていきたい」と語った。