【 避難生活と順応(2) 】 運動したい意欲そぐ

 
【 避難生活と順応(2) 】 運動したい意欲そぐ

狭い屋内で工夫しながら体を動かす生徒たち=2014年12月12日、三春町の富岡町小中学校

 三春町で再開した富岡町小中学校の仮校舎脇、プレハブ小屋に並んだ卓球台にピンポン球の音が響いた。昨年暮れの午後、富岡一中1年の宝槻さくら(13)は体育で卓球に挑戦していた。相手の3年生が上手でラリーは長続きしない。空間が狭いこともあって、つい、「つまらないな」と思ってしまう。

 この日は雨。当初はテニスコートで全学年合同のバスケットボールを予定していたが、屋内運動に変更された。女子は卓球で、男子は教室よりもやや広いホールを使った「ユニホック」に取り組んだ。ホッケーに似た球技だ。

 狭い屋内で、それでもさまざまな工夫をしながら体を動かす生徒たち。しかし、それにも限界がある。同校は設備面の環境が整わないため、バレーボールや長距離走など広い空間が必要な競技は屋内ではできない。同じ仮校舎で学ぶ富岡二中を含めても、生徒数は25人で、対戦相手も単調になりがちだ。

 体動かす機会が減少

 生徒たちは震災後、日常的に体を動かす機会が減った。両校は全員がバス通学。自宅近くまで送り届けてもらったり、バスの到着場所まで親が車で送り迎えしてくれたりするため、歩くことが少ない。

 福島大人間発達文化学類准教授の安田俊広(45)と学生が震災後に行った調査では、福島市の小学4年生の1日当たりの歩数は、同学年の一般的な歩数1万5000〜1万8000歩に対し、1万2000〜1万3000歩にとどまった。安田は「運動の機会が少ないバス通学の児童については、運動不足の傾向がさらに強まっているはず」と推測する。

 さくらは運動が苦手だが、水泳だけは別だ。小学6年生までは、母友恵(37)に「スイミングスクールに通いたい」と自分から希望するほど積極的だった。しかし、中学生になった昨年は、学校で水泳の授業がなかった。たとえ自主的に運動したい意欲があっても、環境が整わずに意欲をそがれてしまうことが少なくない。

 「部活動したくない」

 学校側も、生徒たちの運動不足解消に動く。仮体育館の建設を予定しているほか、生徒の希望があれば、部活動を始めたい考えもある。ただ、一度失った習慣や意欲を取り戻すまでのハードルは高い。さくらは言う。「今のところ部活動はしたくない」(文中敬称略)