【 避難生活と順応(6) 】 仮住まい、次はどこへ

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【 避難生活と順応(6) 】 仮住まい、次はどこへ

仮設住宅に帰宅した兄弟。なだめるほどの大泣きは今はない=いわき市

 「ここ、どう思う?」

 「うーん、いいけどなあ」

 いわき市内の造成地。母佐恵子(37)の問い掛けに、健人(10)がつぶやく。

 「津波来ない所いい」

 楢葉町から同市の仮設住宅に避難している。昨年夏、自宅の購入を視野に入れて市内の造成地数カ所を車で訪れた。「津波が来ない所がいい」。健人は海に近い場所をいやがった。

 健人は弟康人(7)と共に、町が市内に開設した小学校に通う。2人とも、家では学校の話をあまりしない。体験を言葉で説明するのが苦手なためだ。兄弟は共に発達障害があり、朝晩、薬を服用している。

 佐恵子は、学校と連絡ノートをやりとりし、子どもたちの学校生活を把握する。

 避難前に住んでいたアパートより格段に狭い仮設住宅の室内。隣人の生活空間と自分たちとを仕切るのは、薄い壁1枚だけ。佐恵子は当初、突然奇声を上げる兄弟を神経質に叱った。「子どもは騒がなきゃいけないもんだろ」。隣に住む男性がそう言ってくれるたび、佐恵子は救われる思いがした。

 震災からもうすぐ丸4年。今はもう、なだめるほどの大泣きはない。「大きい声はだめだよ」。健人は最近、部屋で弟を注意するようになった。「そういうあなたの声も、十分大きいけど」。苦笑しつつ佐恵子は、弟を導こうとする責任感や、子どもなりの気苦労に思いをめぐらす。

 全町避難中の楢葉町は早ければ春以降の帰還を目指している。帰還で学校が町に戻れば、現在地からのバス通学か、転校かを選ぶつもりだ。

 大きな環境変化予想

 仮設の生活とはいえ落ち着いた日々を過ごしているが、今後大きな環境の変化が予想される。障害のない子どもより新しい環境に慣れるのに時間がかかる兄弟。精神状態が極度に不安定となった避難当初の記憶が、佐恵子の頭をよぎる。

 「ここ(仮設)に居られなくなったら、次はどこ行くの?」。土地探しで「仮住まい」を意識するようになったのか、健人が母親に聞いてくる。方針が明確でない現時点でこれからのことを話しても、混乱するだけだろう。

 「そうだねえ。どこ行こうねえ」

 はぐらかしながら、佐恵子は心の中で謝った。「もうちょっと、待っててね」(文中仮名、敬称略)