【 被災をバネに(5) 】 学びが誰かを支える

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【 被災をバネに(5) 】 学びが誰かを支える

講演会で生徒たちに熱弁をふるう前川さん(左)

 「海外の貧困をなくそうと思ったら英語や社会、医師になるためには生物や化学の勉強が必要。誰かの役に立つには学ばな、あかんねん」

 4月11日に郡山市の日大東北高で開かれたスキルアップ講習会。ふくしま学びのネットワーク事務局長で、有名進学校の私立灘中・高(兵庫県)の元教諭前川直哉(38)は、日大東北高特進コースの2、3年生180人を相手に熱弁をふるった。

 成長するということ

 熱心にメモを取る生徒を前に、前川は続けた。「支えられる存在から、支える存在になるのが成長するということだ」

 前川は名門校の教諭を辞め、昨年4月に福島市に移住した。自身も阪神大震災で被災した経験から、「学びを復興につなげてほしい」という思いで県内の高校生の学習支援にあたっている。

 震災と原発事故の後、県内での進路をめぐる環境は大きく変わった。1次産業は風評被害の影響を受け、企業も打撃を受けた。除染や廃炉の仕事は残るが、いつまで続くか分からない。

 前川は子どもたちに、そうした状況を柔軟に乗り越えてほしいと思う。学ぶことで、さまざまな選択肢を手にしてほしい。福島はもともとの豊かさから「のんびりした県」に映ることもある。192万人余の人口規模から見れば50人は期待できるはずの東大合格者数は、今年は9人。難関大学の合格者数を増やして教育を底上げし、教育に誇りを持てる県にして、人が集まるようにしたい。

 「説明を聞いても、いまいち、ピンときませんでした」。講習会後の質疑で、2年生の三瓶優斗(16)は、前川に率直な感想をぶつけた。「数学が好きだが、それをどう将来の役に立てればいいのか分からない」。講演を聴き、そんな思いを抱いた。

 将来につながる何か

 前川は「職業でなくていい。漠然としたものでも、やりたいことを見つけてほしい」と返した。"学歴神話"が崩壊しつつあると考える前川は「誰かを支えたいという思いを、学びのモチベーション(やる気)につなげてほしい」と願っている。

 三瓶は講習会後、同団体が主催する合宿に参加を申し込んだ。数学を学ぶ中で、将来につながる「何か」を見つけたいと思っている。 (文中敬称略)