【4月13日付社説】日本版DBS/子ども守れる仕組みつくれ

 

 卑劣な性犯罪から、子どもたちが安全に生きる権利を守る仕組みにしなければならない。

 子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を照会する「日本版DBS」創設法案が、国会に提出された。学校や認可保育所などは照会が義務付けられ、学習塾や学童保育、スポーツクラブなどは任意とする。政府は2026年ごろの運用開始を目標としている。

 法案は教員免許などを必要としない民間サービスへの就業も制限するもので、憲法が定める「職業選択の自由」などとの整合性が論点の一つとなる。学習塾などの照会を任意とするのは、働く人の権利に配慮した結果だろう。

 実際にはベビーシッターや芸能事務所などさまざまな職種で、子どもへのわいせつ事件が起きている。照会が義務付けられていない施設などに性犯罪歴のある人が転職することへの懸念は根強い。

 英国は子どもと関わる全ての職種やボランティアなどで照会を義務付けている。与野党には、職業選択の自由を尊重しつつ、幅広い職種に照会を義務付けられるよう踏み込んだ議論が求められる。

 照会期間は禁錮以上の場合、刑の終了から20年間とする。刑法では加害者の更生の観点から刑を終えた10年後に前科とみなされなくなるのに対し、子どもの安全を重視して期間を長くした。

 教員はわいせつ行為で免許を失っても3年経過すれば再取得できるが、更生したと認定されない限り再交付はない。処分歴を長期にわたり確認する仕組みもあり、既に復職は厳しく制限されている。

 性犯罪歴のある人は一定期間、民間サービスを含めて子どもと接する仕事に就くことが制限されるが、全く別の職業に就き、社会復帰する道はある。子どもの安全を最優先に考え、照会期間を20年としたのは妥当だ。

 法案は性犯罪歴の有無にかかわらず、雇用主側が子どもの訴えなどから性加害の恐れがあると判断した場合、安全確保措置として解雇や配置転換を行うことを義務付ける。ただ、判断に必要な基準や調査手法は示されていない。

 被害者となる子どもは、混乱して何が起きているか分からなかったり、自分が悪いのではないかと責めたりする。性加害の恐れがある事態が確認されたときに重要なのは、子どもの声を受け止め、厳正に対応することだ。

 雇用者側が子どもらの訴えを軽視して、対応を怠ることがあってはならない。政府は、安全確保措置が的確に実行されるよう、判断基準などを明示する必要がある。